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2017年04月30日15:28

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ヴァンクリーフ&アーペル

ため息の出るような贅沢さ。

日本の工芸とフランスのハイジュエリーの共演。
「文化の違いを対比するのでなく親和性を見せる」展覧会です。


技を極める
〜ハイジュエリーと日本の工芸〜
@京都国立近代美術館
フォト



最近、美術館で高級ブランドの展覧会が見られるようになりました。
今回はヴァンクリーフ&アーペル。
(以下勝手にVCAと表記)

そして冒頭のように、単に高級メゾンの豪華な作品を見せるだけでなく
日本の工芸と文字通り並べて展示するのが珍しい。

ちなみに日本の工芸としては並河靖之、安藤緑山ら明治大正昭和の名品から
現作家として 森口邦彦(友禅)、志村ふくみ(紬)、北村武資(羅)などテキスタイルや
中川清司(箱)、服部峻昇(漆)など様々。


初日のレクチャーを聴きました。


◆出席者
森口邦彦(重要無形文化財「友禅」保持者)
グレゴリー・ウェインストック(ヴァンクリーフ&ア-ペル工房長)



◆実際にそれぞれを見て。

グレゴリー・ウェインストック(G) : 日仏で違いはあるが共通項もあります。
技を極めるには努力もあるがまず愛情と情熱だということ。
ミステリアスセッティングのジュエリーと玉虫の羽の輝く工芸品が隣り合うのをみても
親和性があると思いました。

森口(M) : 常々日本の伝統という枠の中で活動しています。
昨秋にはパリで作品を展示する機会もありましたが
それも自作の発表だけでしたので、
今回の展覧会でテキスタイルの新たな表現力が発見して貰えるのではないか。
地球から与えられた素材のみで美しいものを創ってきたもの同士
これからの未来に繋がると思う。

◆VCAの秘密

数ある特殊技術の中から
メインビジュアルのフューシャクリップの
「ミステリーセッティング」について
映像を交えて説明されました。

一言でいえば、貴石に溝を作ってレールにはめ
組み立てるということなのですが

・石を磨く
・組み立てる
という作業に各々270時間!ずつかかる。
それに先だっては絵柄を描くクリエイターがおり、
石をカットする職人がおり、、、
全てが手作りという気の遠くなる工程です。


◆分業制

M : 昨年VCAの工房を見学しました。
ヴァンドーム広場の店舗の屋上にあって、太陽の光いっぱい、自然光にあふれていました。
そして整然と仕事をしている人々の表情がなんとにこやかなこと。
"個人主義のフランス"に慣れている自分は、その団体行動ぶりに驚きました。
日本でも柿右衛門窯のようなところには残っていますが…
夢のようなもの作りの姿でした。

G : 作って幸せという雰囲気作りを心がけています。
クリエイティブスタジオとアトリエは常に交流し、デッサンから作られたものがこれでよいか徹底的に話し合います。
ポエジー(詩心)があることも大切にしています。
お二人にはアトリエを見学してもらって期待通りの感嘆の声をあげていただけて嬉しかった。
思うに、我々(VCAの職人や森口さん)には小さいときから芸術に対する情熱があって、息をするのと同じくらい探究心があると思う。

◆伝統の継承について

M : 第二次大戦後何もなくなったとき、
過去を振り返って文化を保護して再建の根幹とするという考えが興りました。
文化財保護法(昭和26年)、そして日本伝統工芸展が大きな役割を果たしてきたのです。
伝統は日々新たにしてそれが次の伝統になる。
しかし昨今それが止められそうな危機感があります。

G : アトリエでは日々伝統の継承が行われています。
と同時に新しいシステムや新しいアイデアも試されます。
ハイジュエリーの全てを知るには全くもって一人の一生では足りない。
職人が辞めるときにはアトリエに彼がつくった道具を残していきます。道具も受け継がれるのです。
私はすべての工程を経験していますが全員がそうなるわけではない。
人には得意な分野がある。覚えるのに時間もかかりますので持久力が求められます。

◆自分でこういうものを作りたいと思うことは

G : 実はやりたいことはやっています。秘密ですが。
VCAのクリエイションではデッサンと出来上がるものは違います。
魂を入れることで自分たちもクリエイションに参加しているという意識があります。

M : VCAは交響曲のようなものだと思います。
音楽が成立するには作曲家、指揮者、多くの楽器を奏でる人々、観客が必要です。
その点、一人で何とかなる友禅と違うかなと。
浮世絵は版元、画家、掘り師、刷り師…と多くの人がかかわった。それに似ている。
個人の作家と混同しない方がいい。

◆完成するということ

G : 皆が「これが頂点」と思うときに完成します。
少しでも誰かに不安や疑いがあればなくなるまでやる。
森口さんのキモノをみて感じたことは、飾っても美しいが女性が着て完成するということ。

M : 着物は着て完成するが、さらにいえばそれを着てどこへ行くかというところまでいって完成するともいえる。
作り手は最初の創造者。着る人が第2の表現者。
ただし伝統にはきっちりと「完成」がある。

◆未来の展望

G : 今回の展覧会で二つの国の技を平行して見せるという扉が開いた。
他の分野でもそうしたことが出来るのではないか。
様々な芸術に触れることが豊かさに繋がる。

M : この展示で日本の工芸にこれまで見えなかったものか見えたと言ったジャーナリストがいる。
互いの中に違うものを発見し、これをどう展開するか。
ジュエラーと工芸家の日々の仕事にどう反映するか、熟成するのを待って欲しい。
VCAがキモノを作るとかそんな単純なことではなくて(笑)。
次の機会にはまた違うものを見せ合えるような関係でありたいと思います。

対談の終わりには質問コーナーがありました。


問◆VCAの技の一端を見せていただきましたが
外に漏らさない、秘密にしておくということは

M : 材料も含め私は全てオープンにしています。
何の秘密もありません。
教えられないことがあるとしたら、それは明日やろうとしていることでしょうか。

G : VCAは社内のアトリエの人には全て継承しています。社外の人には教えません。
まあ、言葉で説明しても身に付かないでしょう。
自分たちがどれほど情熱をもって作っているかは皆さんに伝えられますね。

問◆分業について。全てを一人でやるジュエラーもいますよね?

G : 全ての工程に技があるので、分業することにロジックがあります。

M : うちでも弟子とは協力します。本来、友禅は分業して作るものでした。
19世紀までは全て共同製作だったのです。
「千聡」などはいまでもそのシステムをもっています。
よりクリエイティブなものを求める現代という時代が個人作家を誕生させたのでしょうね。
どちらがいいという問題ではありません。

VCA・CEOのニタラ・ボス氏を紹介して対談は終わりました。
ボス氏のレクチャーは6月3日です。

会場ではパズルや道具の撮影ができます。
フォト



8月6日まで。
http://highjewelry.exhn.jp/

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常設展にマルセル・デュシャン!

今年は『泉』が誕生して100年なのですね〜

泉/Fountain 1917-2017

1年にわたって展示が続きます。
フライヤーも素敵です〜。
フォト


http://www.momak.go.jp/Japanese/collectionGalleryArchive/2017/specialTheme2017curatorial12.html

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