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2017年03月05日20:21
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草間彌生
自伝 『無限の網』 を読んで臨みました。
文章もいい。そして絵にも背中を押して貰いました。
草間彌生
〜わが永遠の魂〜
＠国立新美術館
草間彌生の大規模展覧会を観るのは２０１２『永遠の永遠の永遠』＠国立国際 以来。
◆構成
１．２１世紀の草間彌生（１）
２．初期作品
３．ニューヨーク時代 1957-73
４．２１世紀の草間彌生（２）
５．帰国後の作品 19470-2000
その他屋外展示
会場に入ると大きな空間にずらりと２段がけ、３段がけされた１００号・１２０号の
《わが永遠の魂》シリーズが
１３２点、ずらりと並んでいて驚かされました。
この展示室はスマートフォンでの撮影可。（カメラはだめ）
中央には立体作品《真夜中に咲く花》。
２００９年に開始され、いまなお続くシリーズは少しずつ変わってきているのを感じました。
抽象からいっとき現れていた人物の横顔や動物がすがたを消し、全画面的になっている。
そして私が好きだったのは近作のこの壁の
これ。
《宇宙の足跡》（２０１６）
多摩美学長の建畠晢（あきら）氏の講演会を聴きました。（・は画像が紹介された作品）
『草間彌生の世界〜オブセッションと救済』
建畠氏は国立国際美術館の館長もされていたことがあります。
残念ながら上記展のときはすでに京都市立芸大の学長になられたあとですが。
草間彌生との関係も深く、最大の理解者、と紹介されました。
建畠氏によると、草間彌生の展覧会は、世界的にもテートモダンやポンピドゥーセンター、
ナショナルギャラリー等とひろく行われていますが
今回は他でできないことを実現しようとしたそうです。
それは
�〜軆己圓箸いΔ戮�充実した内容
草間彌生は大変多作な作家であり、作品も大きいため面積が必要
�■横娃娃糠�からのシリーズ『わが永遠の魂』を一度にみたい
もちろんこのシリーズは５００点超え（！）なのですがそれでも今回１３３点を一堂に
みせ、巨大なものをみてから回遊して、最後にもう一度巨大な展示に戻ってくるという
構成もよい
草間彌生は１９２９年３月２２日生まれ、もうすぐ８８歳。
現在も下塗り以外は全て、１２０号の正方形のシリーズを超細密に全面、２日に一枚（！！）のペースで描いている。
いわば第二の黄金期にあります。
シリーズがいつまで続くか楽しみですね。
だいたい、ピカソにしてもウォーホルにしても晩年にすごいシリーズを作っていますね。
あ、草間さんに晩年などというと怒られますね。盛年期か。
それでは第一次黄金期はいつかというと、１９５０年代終わりから６２年のネットペインティング
の時代、渡米すぐです。
年をおって話していきますと、まず草間さんは長野の松本生まれです。
ご実家は種を売っている素封家、というか名門の家でした。
しかし家庭環境の複雑さから精神を病むというか、幻覚をみるというか、
病名をいうとイメージが限定されて良くないと思うのですが、その幻覚を描いたのが
出発点になっています。
・無題（１９３９）
顔に点々があったり、画面に雪のようなドットがある。
このようにただひたすらに繰り返す機械的無機的な作業から豊穣な作品が
現れてくるのが驚異であります。
草間さんはアウトサイダーというか正規の美術教育の外にあると思われていますが
実際は京都で日本画を学んでいます。
それは母親からのがれるという目的もあったようですが、小笠原流ですかお作法の、
そのおうちに預けられるというかたちで京都市立美術工芸学校で学ばれました。
のちに私がニューヨーク近代美術館から依頼されて、
草間は２７歳でアメリカに来たけれど、日本時代はどうなのか、日本文化の影響について
文章を書いてくれといわれてインタビューにいったことがあります。
ところが草間さんは
「全く興味はありません。関係ありません」というばかり。それどころか
「日本に美術なんてあったの？」などと言い出す始末。
それでもリベンジで再び、今度はテープレコーダーを持たずに雑談すると
「速見御舟と村上華岳がライバルだ」という言葉がとびだした。
「あの人は幻をみている」
速水御舟？ああ、『炎舞』のような幻想的作品があるな・・・と思ったらそうではない。
『林檎（果物）』（速水御舟・１９２０）
という作品がある。重厚なリアリズムの作品。このように物を凝視してうかびあがる
リアリティを 「幻視」 だという。
・玉葱（１９４８）
草間さんの作品。テーブルクロスのチェック地が揺らぎを含み、後のネットドットにつながる。
その他の初期作品
・残骸のアキュミレイション（離人カーテンの囚人）（１９５０）
草間さんはこのように目の前の光景がうねうねと遠ざかり、音も遠くになるが、遠ざかっても
みえているし聞こえている状態なのだそう。
・残夢（１９４９）
初期の傑作。おそらくは実家の畑であるか、強い赤と青に枯れたヒマワリ。
これはシュールレアリスムの影響かという議論があります。
実際滝口修三からシュールレアリスムとして評価されているが、草間さん自身は否定している。
内圧的なシュールレアリスムというか、私も少し違うと思います。
シュールレアリスムではオートマチズムとか偶然性の利用などで作品が作られるが
草間さんはそのような方法論を必要としなかった。
心理的なオリというか、現実を描くことで抑圧から解放されようとする自己救済のもの。
心理学者や精神科医による評価を受けたり、タケミヤ画廊で個展をひらいたりしながら
しかし１９５７年初期作品を自分で燃やしてアメリカへ行きました。
それに ジョージア・オキーフとの文通があったことはご存じのとおり。
草間さんが最初に行ったのはシアトル。
でも１９５８年にはニューヨークに行きました。そして第一次黄金期を迎えるのです。
思いますに、天才というのは自分がいるべき場所を知っています。
自分の時代（とき）を知っているといってもいい。
必要な時に必要な場所に自然と行くのです。
では１９５０年代のニューヨークとはどのようなところだったか。
ポロックやデ・クーニングなど第一世代のピークを過ぎたところでした。
抽象をやるひとというのは過剰文学性というか、ヒロイズムというか、
だから自殺するひとも多いのかもしれませんが。
その点草間さんは筆触ゆたかなものに嫌悪して機械的無機的なことを繰り返した。
モダニズムの正当な実践というか、抽象表現主義からミニマルアート・ポップアートへの
重要なところにいるわけです。
・�癸押淵優奪肇撻ぅ鵐謄�ング）（１９６０）
・黄色い網（１９６０）
無機的に繰り返しているのに、マチエールがある。そしてこれは均一なマルじゃないんですね、
最後がハネている。
ジャッドのテキストの中心にもなっています。
灰色の地の上に白いネットがかかれているけれど、透明感があるでしょう。
これは、まず真っ黒に塗ってから乳白色をかぶせているためです。
網目にストライプがあるようだけれど、これは草間さんがアイロン台の上で描いていて、
だからアイロン台の巾だとかいう話もあります。
いずれにせよ網目は均質でない。ゆらいでいる。
網のおおきさで拡がったり縮まったり、これはポロックと同じです。
そして集積。
・エアメール・アキュミュレーション（１９６１）
・文字の集積（１９６２）
ソフトスカルプチュア 立体への展開
・１０００のボート・ショー（１９６３）
・トラヴェリング・ライフ
これは、白い脚立に、男性を意味する白いソフトスカルプチュアと
女性を意味する白いハイヒールを一面につけ、
脚立という社会のシステムを女性（ハイヒール）が男性（ソフトスカルプチュア）
と戦いながら（とがった靴先で踏みつけながら）のぼっていく、というフェミニズムの作品。
でも実際のところ、ハイヒールは落ちそうだったり、ひっくりかえっていたりと
勇ましくないようです。
・マイ・フラワー・ベッド（１９６２）
パフォーマンスと反戦運動、スキャンダルの女王
草間さんは近代美術館の前庭で裸のパフォーマンスをしたことがあります。
マイヨール、ピカソ、ヘンリームーアなどの彫刻のあるところで
複数の男女が裸になって噴水にはいっていく。
当然警備員にとめられたが画像は撮られていました。
このようなイベントがつづくとこわい人だという気になるが、
本質は戦後モダニズムの正当な継承でありオーソドックスなモダニズムです。
１９７５年、体調をこわして帰国
帰国後の草間さんのコラージュ展をニシムラ画廊にみにいったことがあります。
声もかけられずこわごわ観て帰りました。
しかし作品には圧倒されました。
・かぼちゃととかげの思い出（１９７５）
隔絶したものを感じ、コラージュをみてふるえました。
・自殺した私（１９７７）
草間さんを国内でも再評価したいと思って、なにかの折に１点作品を入れたり。
そしてベネチアビエンナーレに出ていただいた。
美術館での展覧会が実現したときには、夢はもっていると叶うんだな、と思いましたね。
さて近年の草間彌生。
・愛はとこしえ（２００４〜）
フェルトペンによる５０点のドローイング。第二次黄金期のきっかけになったシリーズ。
・恋人たち（２００５）
広い意味での抽象だった草間さんに具象がだんだん出てきている。
・我が心の中の旗（２００６）
自画像三部作
２０１１年の３点が紹介されました。
これはウフィツィ美術館のヴァザーリ回廊（非公開）にあるレンブラント、アングル、シャガールといった
名品に日本人として横尾忠則、杉本博司、そして草間彌生を加えて展示したときのもの。
（ウフィツィ美術館自画像コレクション〜巨匠たちの秘めた素顔・２０１０年）
これにも草間さんならではのエピソードがありました。
日本の３人には寄贈していただくことになっていたのですが、草間さんは
「私は一切寄贈しない」
「あんたにあげるから勝手にやったら？」
外交筋を通じて寄贈させていただきました。
近作においては、ネオポップなイメージにくわえて霊的な気配、スピリチュアルなものを
感じます。
異界、アナザーワールドというか。それがいまのシリーズの魅力にもなっています。
・人間たちの営み（２０１３）
・静かな朝のめざめ
・…
・生命は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時（２０１４）
富士山の絵です。これは途中で描く気を失って、本物の富士山をみにいってから完成しました。
太陽は自画像です。
・真夜中に咲く花（２０１０）
これも愛らしいですが、みかたによっては食虫植物のようです。
・ナルシスの海（２００１）
第１回横浜トリエンナーレの作品です。
運河も使えますよ、といったら「じゃあ２０００個のミラーボールを浮かべてちょうだい」
と言っておしまい。
でも実際にミラーボールを河に投入したら、ぶつかりあうカシャカシャという音とか、
ちょうどさしてきた夕日とか、もう美しかったですねそれは。泣いている人もいました。
天才ってこんなものかな、と思いましたね。
一気に本質にくる。試行錯誤はしない。アイデアをそのまま実現するというか
一挙に核心に迫る。
・木に登った水玉（２０１７）
・黄樹リビングルーム（２０１７）
この会場のものです。
草間さんの作品はたった１つの原理で貫かれている。
そして続けさせているのは心理的抑圧・オブセッションである、と。
本人にとってはそこから救済されたいものですが、単なる自己救済ではありません。
つらいオブセッションをかかえながら外在化させている人に我々は吸い寄せられる。
心の武装を解除して寄り添いたくなる。
そこに融和的な空間が生まれるのです。
草間さんの作品に人気があるのはそれがファンシーだということもありますが
寄り添いたくなるからなのです。
そして草間さんは自分と同時に世界の同時救済を願っている。
そうした精神に貫かれた制作を行っているのです。
（質疑応答なし）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ショップで会場限定の「日めくり」を買いました。
31の作品に番号がふられていて永遠に使えるカレンダーです。
図録より観るかな？と思って。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
他にも、水玉のシールを貼って遊ぶコーナーがあったり。
屋外にも黄色のかぼちゃや水玉模様の布を巻かれた樹々があります。
新美術館を草間がジャックしている感じですね。
５月２２日まで。
http://
文章もいい。そして絵にも背中を押して貰いました。
草間彌生
〜わが永遠の魂〜
＠国立新美術館
草間彌生の大規模展覧会を観るのは２０１２『永遠の永遠の永遠』＠国立国際 以来。
◆構成
１．２１世紀の草間彌生（１）
２．初期作品
３．ニューヨーク時代 1957-73
４．２１世紀の草間彌生（２）
５．帰国後の作品 19470-2000
その他屋外展示
会場に入ると大きな空間にずらりと２段がけ、３段がけされた１００号・１２０号の
《わが永遠の魂》シリーズが
１３２点、ずらりと並んでいて驚かされました。
この展示室はスマートフォンでの撮影可。（カメラはだめ）
中央には立体作品《真夜中に咲く花》。
２００９年に開始され、いまなお続くシリーズは少しずつ変わってきているのを感じました。
抽象からいっとき現れていた人物の横顔や動物がすがたを消し、全画面的になっている。
そして私が好きだったのは近作のこの壁の
これ。
《宇宙の足跡》（２０１６）
多摩美学長の建畠晢（あきら）氏の講演会を聴きました。（・は画像が紹介された作品）
『草間彌生の世界〜オブセッションと救済』
建畠氏は国立国際美術館の館長もされていたことがあります。
残念ながら上記展のときはすでに京都市立芸大の学長になられたあとですが。
草間彌生との関係も深く、最大の理解者、と紹介されました。
建畠氏によると、草間彌生の展覧会は、世界的にもテートモダンやポンピドゥーセンター、
ナショナルギャラリー等とひろく行われていますが
今回は他でできないことを実現しようとしたそうです。
それは
�〜軆己圓箸いΔ戮�充実した内容
草間彌生は大変多作な作家であり、作品も大きいため面積が必要
�■横娃娃糠�からのシリーズ『わが永遠の魂』を一度にみたい
もちろんこのシリーズは５００点超え（！）なのですがそれでも今回１３３点を一堂に
みせ、巨大なものをみてから回遊して、最後にもう一度巨大な展示に戻ってくるという
構成もよい
草間彌生は１９２９年３月２２日生まれ、もうすぐ８８歳。
現在も下塗り以外は全て、１２０号の正方形のシリーズを超細密に全面、２日に一枚（！！）のペースで描いている。
いわば第二の黄金期にあります。
シリーズがいつまで続くか楽しみですね。
だいたい、ピカソにしてもウォーホルにしても晩年にすごいシリーズを作っていますね。
あ、草間さんに晩年などというと怒られますね。盛年期か。
それでは第一次黄金期はいつかというと、１９５０年代終わりから６２年のネットペインティング
の時代、渡米すぐです。
年をおって話していきますと、まず草間さんは長野の松本生まれです。
ご実家は種を売っている素封家、というか名門の家でした。
しかし家庭環境の複雑さから精神を病むというか、幻覚をみるというか、
病名をいうとイメージが限定されて良くないと思うのですが、その幻覚を描いたのが
出発点になっています。
・無題（１９３９）
顔に点々があったり、画面に雪のようなドットがある。
このようにただひたすらに繰り返す機械的無機的な作業から豊穣な作品が
現れてくるのが驚異であります。
草間さんはアウトサイダーというか正規の美術教育の外にあると思われていますが
実際は京都で日本画を学んでいます。
それは母親からのがれるという目的もあったようですが、小笠原流ですかお作法の、
そのおうちに預けられるというかたちで京都市立美術工芸学校で学ばれました。
のちに私がニューヨーク近代美術館から依頼されて、
草間は２７歳でアメリカに来たけれど、日本時代はどうなのか、日本文化の影響について
文章を書いてくれといわれてインタビューにいったことがあります。
ところが草間さんは
「全く興味はありません。関係ありません」というばかり。それどころか
「日本に美術なんてあったの？」などと言い出す始末。
それでもリベンジで再び、今度はテープレコーダーを持たずに雑談すると
「速見御舟と村上華岳がライバルだ」という言葉がとびだした。
「あの人は幻をみている」
速水御舟？ああ、『炎舞』のような幻想的作品があるな・・・と思ったらそうではない。
『林檎（果物）』（速水御舟・１９２０）
という作品がある。重厚なリアリズムの作品。このように物を凝視してうかびあがる
リアリティを 「幻視」 だという。
・玉葱（１９４８）
草間さんの作品。テーブルクロスのチェック地が揺らぎを含み、後のネットドットにつながる。
その他の初期作品
・残骸のアキュミレイション（離人カーテンの囚人）（１９５０）
草間さんはこのように目の前の光景がうねうねと遠ざかり、音も遠くになるが、遠ざかっても
みえているし聞こえている状態なのだそう。
・残夢（１９４９）
初期の傑作。おそらくは実家の畑であるか、強い赤と青に枯れたヒマワリ。
これはシュールレアリスムの影響かという議論があります。
実際滝口修三からシュールレアリスムとして評価されているが、草間さん自身は否定している。
内圧的なシュールレアリスムというか、私も少し違うと思います。
シュールレアリスムではオートマチズムとか偶然性の利用などで作品が作られるが
草間さんはそのような方法論を必要としなかった。
心理的なオリというか、現実を描くことで抑圧から解放されようとする自己救済のもの。
心理学者や精神科医による評価を受けたり、タケミヤ画廊で個展をひらいたりしながら
しかし１９５７年初期作品を自分で燃やしてアメリカへ行きました。
それに ジョージア・オキーフとの文通があったことはご存じのとおり。
草間さんが最初に行ったのはシアトル。
でも１９５８年にはニューヨークに行きました。そして第一次黄金期を迎えるのです。
思いますに、天才というのは自分がいるべき場所を知っています。
自分の時代（とき）を知っているといってもいい。
必要な時に必要な場所に自然と行くのです。
では１９５０年代のニューヨークとはどのようなところだったか。
ポロックやデ・クーニングなど第一世代のピークを過ぎたところでした。
抽象をやるひとというのは過剰文学性というか、ヒロイズムというか、
だから自殺するひとも多いのかもしれませんが。
その点草間さんは筆触ゆたかなものに嫌悪して機械的無機的なことを繰り返した。
モダニズムの正当な実践というか、抽象表現主義からミニマルアート・ポップアートへの
重要なところにいるわけです。
・�癸押淵優奪肇撻ぅ鵐謄�ング）（１９６０）
・黄色い網（１９６０）
無機的に繰り返しているのに、マチエールがある。そしてこれは均一なマルじゃないんですね、
最後がハネている。
ジャッドのテキストの中心にもなっています。
灰色の地の上に白いネットがかかれているけれど、透明感があるでしょう。
これは、まず真っ黒に塗ってから乳白色をかぶせているためです。
網目にストライプがあるようだけれど、これは草間さんがアイロン台の上で描いていて、
だからアイロン台の巾だとかいう話もあります。
いずれにせよ網目は均質でない。ゆらいでいる。
網のおおきさで拡がったり縮まったり、これはポロックと同じです。
そして集積。
・エアメール・アキュミュレーション（１９６１）
・文字の集積（１９６２）
ソフトスカルプチュア 立体への展開
・１０００のボート・ショー（１９６３）
・トラヴェリング・ライフ
これは、白い脚立に、男性を意味する白いソフトスカルプチュアと
女性を意味する白いハイヒールを一面につけ、
脚立という社会のシステムを女性（ハイヒール）が男性（ソフトスカルプチュア）
と戦いながら（とがった靴先で踏みつけながら）のぼっていく、というフェミニズムの作品。
でも実際のところ、ハイヒールは落ちそうだったり、ひっくりかえっていたりと
勇ましくないようです。
・マイ・フラワー・ベッド（１９６２）
パフォーマンスと反戦運動、スキャンダルの女王
草間さんは近代美術館の前庭で裸のパフォーマンスをしたことがあります。
マイヨール、ピカソ、ヘンリームーアなどの彫刻のあるところで
複数の男女が裸になって噴水にはいっていく。
当然警備員にとめられたが画像は撮られていました。
このようなイベントがつづくとこわい人だという気になるが、
本質は戦後モダニズムの正当な継承でありオーソドックスなモダニズムです。
１９７５年、体調をこわして帰国
帰国後の草間さんのコラージュ展をニシムラ画廊にみにいったことがあります。
声もかけられずこわごわ観て帰りました。
しかし作品には圧倒されました。
・かぼちゃととかげの思い出（１９７５）
隔絶したものを感じ、コラージュをみてふるえました。
・自殺した私（１９７７）
草間さんを国内でも再評価したいと思って、なにかの折に１点作品を入れたり。
そしてベネチアビエンナーレに出ていただいた。
美術館での展覧会が実現したときには、夢はもっていると叶うんだな、と思いましたね。
さて近年の草間彌生。
・愛はとこしえ（２００４〜）
フェルトペンによる５０点のドローイング。第二次黄金期のきっかけになったシリーズ。
・恋人たち（２００５）
広い意味での抽象だった草間さんに具象がだんだん出てきている。
・我が心の中の旗（２００６）
自画像三部作
２０１１年の３点が紹介されました。
これはウフィツィ美術館のヴァザーリ回廊（非公開）にあるレンブラント、アングル、シャガールといった
名品に日本人として横尾忠則、杉本博司、そして草間彌生を加えて展示したときのもの。
（ウフィツィ美術館自画像コレクション〜巨匠たちの秘めた素顔・２０１０年）
これにも草間さんならではのエピソードがありました。
日本の３人には寄贈していただくことになっていたのですが、草間さんは
「私は一切寄贈しない」
「あんたにあげるから勝手にやったら？」
外交筋を通じて寄贈させていただきました。
近作においては、ネオポップなイメージにくわえて霊的な気配、スピリチュアルなものを
感じます。
異界、アナザーワールドというか。それがいまのシリーズの魅力にもなっています。
・人間たちの営み（２０１３）
・静かな朝のめざめ
・…
・生命は限りもなく、宇宙に燃え上がって行く時（２０１４）
富士山の絵です。これは途中で描く気を失って、本物の富士山をみにいってから完成しました。
太陽は自画像です。
・真夜中に咲く花（２０１０）
これも愛らしいですが、みかたによっては食虫植物のようです。
・ナルシスの海（２００１）
第１回横浜トリエンナーレの作品です。
運河も使えますよ、といったら「じゃあ２０００個のミラーボールを浮かべてちょうだい」
と言っておしまい。
でも実際にミラーボールを河に投入したら、ぶつかりあうカシャカシャという音とか、
ちょうどさしてきた夕日とか、もう美しかったですねそれは。泣いている人もいました。
天才ってこんなものかな、と思いましたね。
一気に本質にくる。試行錯誤はしない。アイデアをそのまま実現するというか
一挙に核心に迫る。
・木に登った水玉（２０１７）
・黄樹リビングルーム（２０１７）
この会場のものです。
草間さんの作品はたった１つの原理で貫かれている。
そして続けさせているのは心理的抑圧・オブセッションである、と。
本人にとってはそこから救済されたいものですが、単なる自己救済ではありません。
つらいオブセッションをかかえながら外在化させている人に我々は吸い寄せられる。
心の武装を解除して寄り添いたくなる。
そこに融和的な空間が生まれるのです。
草間さんの作品に人気があるのはそれがファンシーだということもありますが
寄り添いたくなるからなのです。
そして草間さんは自分と同時に世界の同時救済を願っている。
そうした精神に貫かれた制作を行っているのです。
（質疑応答なし）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ショップで会場限定の「日めくり」を買いました。
31の作品に番号がふられていて永遠に使えるカレンダーです。
図録より観るかな？と思って。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
他にも、水玉のシールを貼って遊ぶコーナーがあったり。
屋外にも黄色のかぼちゃや水玉模様の布を巻かれた樹々があります。
新美術館を草間がジャックしている感じですね。
５月２２日まで。
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