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2016年11月13日07:06

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蜘蛛の糸

間違いなく今年のマイ・ベストテンに入る展覧会でした。


蜘蛛の糸
〜クモがつむぐ美の系譜 江戸から現代へ〜
@豊田市美術館

蜘蛛はその姿の不気味さから好きでない人も多いでしょう。
しかしその一方で蜘蛛の巣の不思議な美しさは多くの人を惹き付けます。
そして「幸せをつかむ」「富を得る」吉祥模様として、古来からその意匠は様々なものに使われてきました。
この展覧会では日本を中心に江戸時代から現代まで蜘蛛と蜘蛛の糸を描写した作品、
蜘蛛の糸を象徴的に用いた作品、
蜘蛛の巣のように複合的に繋がり会う現代を探求する作品などが展示されています。

会場にはいるとまずこの作品。
フォト

メインビジュアルである塩田千春さんの《夢のあと》。

高い天井の展示室いっぱいに張り巡らされた黒い糸に
10着のウエディングドレスがからめとられています。

ゴシック風というかエドワード・ゴーリーの絵のようでもあり。

タイトルが《夢のあと》というのもおそろしい。


おびただしい糸は、床には樹脂で 壁にはホチキスのようなピンで留められていました。
(写真撮影可)


以下の構成と心に残った作品

【第1章蜘蛛の糸を見つめて】
・速水御舟《昆虫二題》
・熊谷守一《地蜘蛛》
・他に根付けや鐔(つば)など工芸品多数。

【第2章象徴としての蜘蛛の糸】
・森玉泉《衝立に寄る遊女図》
・上村松園《焔(ほむら・下絵)》
・森村泰昌《なにものかへのレクイエム(地と光の間を紡ぐ人/1946年インド)
・猪瀬光《ドグラ・マグラ》

【第3章芥川龍之介の『蜘蛛の糸』】
・鴨居玲《蜘蛛の糸》
・ムットーニ《蜘蛛の糸》
・小泉明郎《悲劇の誕生》
←毎時00分と30分から17分30秒上演

【第4章アラクネの末裔たち】
ここにいうアラクネとは勿論、ギリシャ神話で女神アテナを凌ぐ腕前を自慢したゆえアテナの怒りをかって蜘蛛に変えられたという物語の女性を意味します。

・草間彌生《No.AB》
・塩田千春《State of Being(Children's dress)》
・手塚愛子《縦糸を引き抜く 新しい畳として》

【第5章蜘蛛の巣のように立ち現れるものたち】
・小川信治《レオン大聖堂》
・法貴信也《Untitled》
・秋山陽《交信》
・青木野枝《Untitled》

【第6章見えない糸、希望の糸】

・岡本柳南《蜘蛛》
・spider×THE NORTH FACE《MOON PARKA》
・ミヤギフトシ《1970》《気狂い屋敷で:島の家でゾーイー(と他の物語)を読む》


個人的に一番好きだったのは第2章の

工藤哲巳《無限の糸の中のマルセル・デュシャン プログラムされた未来と記録された記憶の間での瞑想》。

鳥かごの中にはチェス板といくつかの駒。中央に白い人間の頭部とそれを抱えるような白い両手首が立てられています。鳥かごの上からは向かって左に白、右に濃灰色の玉が吊るされ、そしてその全てにおびただしい白い糸が絡み付いていました。

作品横に添えられた解説文。
運命の糸に嘲弄され呪縛された人間の危機的状況のようであり、また、社会に対して挑発的・批判的であるべきにもかかわらずそこでしか生きられないという自己矛盾に引き裂かれた芸術家の姿を体現しているようでもあり、デュシャンの名を借りながらもここには運命付けられた未来と動かしがたい過去の間で身動きをとることのできない自身の姿が重ね合わされているといえるでしょう。



図録はまだできていません。送料無料で予約受付中。

12月25日まで。
http://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2016/special/kumonoito.html


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常設展示室では。
部屋の奥と手前でクリムトの《オイゲニア・プリマフェージの肖像》とブランクーシの《雄鶏》とが向かい合っていました。
他に日本画では 御舟、春草、大観。
洋画では シーレ、ココシュカ、アルプ、
岸田劉生、中村彝とお宝満載です。



別館・高橋逸郎館でも特別展示がありました。
『琴線』

本館と関連してか、「線」をテーマとする展示です。

中西夏之、李禹煥、猪熊弦一郎など。
フォト




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展覧会を見終わったあと庭園を散歩しました。


豊田市美術館は本当に建物も環境も素晴らしいところです。
茶室は紅葉が見事でした。
フォト



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