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2016年11月12日14:37

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11/8 杉本博司 ロスト・ヒューマン@東京都写真美術館

改装していた東京都写真美術館のリニューアルオープン。どんな著名な写真家の展覧会を持ってくるだろうと思っていたら、なんと杉本博司だった。「著名な」に納得、と同時に、私のイメージでは氏は「写真家」というより「アーティスト」なので、荒木経惟とか東松照明とかを予想していた(深瀬昌久だったら一番嬉しい)のでちょっと意外。そうは言ってもアートとして杉本博司の個展はすごく楽しみだったので、チケットは早々に用意。9月から始まっていたのに気付けば今週末で会期終了。今夏秋の時の流れは天候不順のためかひときわ早かった。平日昼間のわりには混んでいたので、最終日の今週末はかなり混むかもしれない。

でも、観るに値する展覧会だった。ただし、「世の末」を33のシナリオと大判写真で見せつけられるので、打ちのめされること必定。鑑賞後4日経っているがその余波が未だに静かに押し寄せる。こわい・・

https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-2565.html
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1948年に東京に生まれた杉本博司は、アメリカ・カリフォルニア州のアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学び、「ジオラマ」「劇場」「海景」シリーズなどの大型カメラで撮影された精緻な写真作品を制作して、国際的に高い評価を確立した写真家で現代美術家。その作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やニューヨーク近代美術館(MoMA)、ロンドンのテート・ギャラリーなど世界中の美術館に所蔵されている。
また、近年は活動の範囲を広げ、執筆や設計も手掛けている杉本は、2008年に建築設計事務所「新素材研究所」を建築家の榊田倫之と設立。これまでに静岡のIZU PHOTO MUSEUMや東京・六本木のLondon Galleryの内装を担当している。来年の2月には、展示室の改装を手掛ける静岡のMOA美術館がリニューアル・オープンするほか、同年秋には、ランドスケープ全体を設計した神奈川の小田原文化財団 江之浦測候所の開館が予定されている。
杉本の世界観や歴史観に迫る本展では、2014年にパリの美術館、パレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)で開催された「Lost Human Genetic Archive」展のインスタレーションを東京ヴァージョンとして新たに展開。人類の死滅を想定し、遺物となった歴史や文明について、「比較宗教学者」「宇宙物理学者」といった33の視点から考察する。
会場では、「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」「廃墟劇場」「仏の海」の3シリーズを展示。今回、世界で初めて公開される「廃墟劇場」は、1970年代から制作しているシリーズ「劇場」が発展したもので、実際に廃墟と化した劇場で杉本が自らスクリーンを貼り直して映画を投影し、作品1本分の光量で露光した作品だ。また、「仏の海」は、10年以上にわたって杉本が取り組んできた、京都の蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)の千手観音を撮影したシリーズで、今回は同シリーズの大判作品による新たなインスタレーションが展示される。
なお、本展は、大規模改修事業を経て9月3日にリニューアル・オープンする東京都写真美術館の総合開館20周年を記念して行われるもの。


第1会場の自動扉が開くとまず眼に入るのが、代表作「海景」シリーズの1枚。この世の始まりなのか終わりなのか。神が降臨するのか、去った後なのか。静かな緊張感。
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そこからは、赤錆びたトタンの壁、朽ちそうな木材の骨組みが連なる「テーマパーク ロスト・ヒューマン」が始まる。廃墟のようだ。入り組んだトタンの仕切りに促されるように中へ進むと、そこには張り紙。
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「私は○○である。今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。」から始まる文章が手書きで書かれている。全部で33。○○にあたるのは、理想主義者だったり、あるいは養蜂家、遺伝子学者、ジャーナリスト、隕石蒐集家、国際連合事務総長だったり・・・33の職種の人がそれぞれの立場で世界最後の日に執筆した文章という想定である。

文章は作品リストにも印字されているが、この手書き文字は各界の著名人の手によるもの、杉本氏曰く「字は・・・その人の姿なのだ。文明の終わりは肉筆で書かれねばならない。文明が終わる時こそ、その始原の姿が現れるのだ」
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更にその文章を具現化するようなオブジェクトが置かれている。
例えば古生物研究者の一角には三葉虫や海百合の巨大な化石が置かれている、人類の消費と生産力の増大で化石燃料を使うことになり、大気成分の構成が急激に変化、地表から哺乳類が死に絶えるシナリオ。
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比較宗教学者のコーナーには、杉本氏の写真「ラストサパー サンディ」が掲げられている。蝋人形館で撮影した「キリスト最後の晩餐」の写真、ひどく損傷しているのは大型ハリケーンサンディによって水没したせいだと後から知った。わざとじゃないんだ。メッセージは決して難解ではないけれど、手が込んでいて訴える力の強さがある。ちなみに、全てのオブジェクトは氏の所有物だというから又びっくり。
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「バービーちゃん」は、人類がバービー人形のようになりたくて美容整形を繰り返し、遺伝子操作までして美男美女を作り出したがその遺伝子はやがて生殖能力皆無のモノとなり人類は滅亡するというシナリオ。並べられたバービー人形の上に、不機嫌な顔をしたレンチ人形、その背景はぎっしりと卒塔婆。かなり怖い。

人間の愚かな行為が人類の滅亡へと導く、どれもあり得そうで、というか、まさにその途上にあると思えるものもあって、怖くてたまらない気持ちになった。アメリカ大統領もまさかのトランプ氏に決まったし・・・

そしてこの展示室最後の写真は、最初と同じく《海景》シリーズの一。そうか、人類誕生時の海と人類滅亡時の海だったのだ。太陽系の創世から46億年、そのうち人類の文明はたった7千年ほどのものなのだ。だとしても、今日、あるいは昨日だったかもしれないその日に立ち会いたくないし、その日が今着実に近づいているかもしれない事に底知れぬ恐怖を覚える。

暗澹たる気持ちで階下の第2会場へ。大きな四角い展示室が対角線で区切られている。最初の三角形の部屋には、《廃墟劇場》シリーズが9点。
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経済の減退や、映画鑑賞環境の激変などから廃墟と化したアメリカ各地の劇場を、2年間にわたって杉本自らがロケハンし、ジェネレーターとプロジェクター、映画ソフト、そしてスクリーンを持ち込み、映画を投影し、上映1本分の光量で長時間露光した作品となる。かつて華やかだった劇場の細部の飾りが埃をかぶって壊れかけている、映画のスクリーンは長時間露光で白く飛んでいて何を写したものかは解らない。しかし、この白く飛んだスクリーンには「ディープインパクト」「博士の異常な愛情」「ゴジラ」「羅生門」等の映画が写し出されていたのだ。第1会場での感想を引きずって来たのでひたすら重い。

が、対角線の裏に回ると、今度は9点の仏像の写真。三十三間堂の千手観音を早朝の自然光のみで大型カメラで撮影した作品だという。
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なるほど、9点の廃墟劇場と対になっているのだ。第1会場の世界滅亡のシナリオが33というのも三十三間堂と関連づけているだろうし、9という数字も九品仏に関係しているかもしれない。
広い会場には小さな光学ガラスの五輪(地、水、火、風、空)塔がある。水を表す部分に《海景》を配している。
最後に「救われる」という構成になってこの展示は終わるのがこの展覧会の意図なのだろう。

ただ、本当に救われるのか。光背の描く円と放射線の繰り返しが、まるで無機質な幾何学模様のように見えて、仏様が遠い存在に思えてならない。いや、そうならないように人類は今からでも軌道修正しなければならないのだろう。文明が廃墟劇場とならないように。

明日13日まで。もし時間があればぜひに。

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