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2016年09月25日07:10

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ウィリアム・ホガース

何がすごいって展示のしかたです。

ウィリアム・ホガース
〜"描かれた道徳"の分析〜
@伊丹市立美術館

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ホガースは18世紀前半にイギリスで活躍した画家・銅版画家です。
それまでの宗教や神話・歴史から同時代の社会の出来事に主題を移し、
いったん描いた油絵を版画におこして大量生産することによって
安価な価格で広く大衆を顧客としました。
販売方法も、新聞で募集し、代金の半額は事前に、残金は完成時に支払うという当時ユニークなものでした。

収蔵作品展ですし、一見地味なものなのですが行って驚きました。

出世作《ヒューディブラス》、《ドン・キホーテ》
《娼婦一代記》《放蕩者一代記》《当世風結婚》《勤勉と怠惰》
版画はいずれも40cm×50cmで6〜12枚がストーリーのある組版画になっています。

例えば《娼婦一代記》では
1.田舎から主人公の少女が出て来て女衒の老婆に騙される
2.金持ちの囲い者になるが若い愛人と浮気しているのがバレそうになりテーブルを蹴飛ばす
3.浮気がばれて追い出され売春婦となるが役人に摘発される
4.逮捕され強制労働させられる
5.釈放後梅毒で瀕死の主人公。愚かな幼い息子。治療法を争う医者。持ち物を物色する大家。
6.主人公の葬式。

と6枚で一組。

その一枚ずつの傍らに、まず900字近い解説があります。
つまり物語全体では5400字を読まされます。
物語の流れ、画面の人物たちや描かれている物1つひとつの説明です。

さらに作品のコピーも傍らにあり、解説に出てきた着目点を朱色で着色、或いは数字とアルファベットが朱記されています。
人物については12…と数字、事物はab…とアルファベットです。

そして別紙にその一覧表。
つまり全く初見の人にも視覚情報で全てを伝えているのです。

情報が多いので見るのに予想外の時間がかかりました。
しかし見終わると充実感はあります。

最後の《美の分析》2点にいたっては、一作品に100以上ずつの"みどころ解説"があります。
これは掲示すると観客が一箇所に長時間かたまってしまうと予想されたのか、
A3表裏びっしりの解説をクリアファイルに数点用意し、観客がそれを持って鑑賞できるようになっていました。
(有名な「ホガース曲線」はここに説明があります。)

図録においても詳細解説は徹底しており、
作品ページに半透明の紙が挟み込まれ、展示と同様見所が朱記されていて
作品に重ねて見られるようになっていました。

大量生産されたものなので作品自体の価値は
わかりませんがこの展示、なかなかです。

11月3日まで。
http://artmuseum-itami.jp/jp/category/exhibition/current_exhibition/

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併設の柿衞(かきもり)文庫では

歩く詩人
〜ワーズワースと芭蕉〜

が開催されています。
芭蕉の直筆《古池や》、ワーズワースの自筆ノート等に加え
両者にインスパイアされた現代作家の作品が60余り展示されています。

美術館の庭には咲き乱れる萩、そして色づきはじめた柿。
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