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2015年09月28日06:04

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B級ギャング映画として、映画評論家たちがほぼ無視した作品だけれど、僕には思い出の一本。ロバート・ギスト監督「殺しの逢びき」(1966)。

どのくらい無視されているかというと、ムービーウォーカーのページから検索するとすぐ分かります。つまり映画題名で検索すると、出てきません。監督名のロバート・ギストで検索すると、「地獄の逢びき」となっています。誰がどこで間違えてん? オールシネマ・オンラインだと、ちゃんと「殺しの逢びき」で出てきますけどね。←オールシネマオンラインは、訂正情報をメールしたら“お礼メール”が届いていたのですが(最近来ないな)、ムービーウォーカーは訂正情報を受け付けるメールアドレスすら書いてないので、このまま放置しておこう。こっちは公開当時のミニ・ポスターを持っているんだから間違いない。

原作がノーマン・メイラーで、俳優のロバート・ギストはメイラー原作の「裸者と死者」に出ていたことがあります。主役は「素晴らしきヒコーキ野郎」のスチュアート・ホイットマン。だから僕は見に行ったんですな。梅田日活シネマでスプラッシュ公開でした。見た人が少ないだろうどころか、この映画を知っている人も少ないと思う。

物語は、テレビ番組のキャスター、スティーブン・ロージャック(スチュアート・ホイトマン)が主人公。いろいろな社会問題を俎上にあげ、舌鋒鋭く批判を展開ししています。戦場では英雄だったという背景があり、さらに視聴者からの意見電話にきちんと答え、次々とさばいて人気を博しています。この日もマフィアのボスをやり玉に挙げ、返す刀で警察の無能さを切る。そこへ視聴者を装ったロージャックの妻(エリナー・パーカー、写真2)が電話してきます。でもロージャックは離婚を考えていて冷やかし電話として片付けます。番組が終わり、その妻との離婚を決定しようとペントハウスに住む妻を訪ねるのですが、言い争いから妻はビルの下へ落ちてしまう、という展開です。

この落下シーンが僕にはポイントでした。そのちょっと前にジョン・ブアマンの「ポイント・ブランク」があり、ジョン・バーノンがペントハウスから落ちます。そのとき体の輪郭に合成の線がくっきりと見えていた。でもこの「殺しの逢びき」には合成の線がないわけです。どういう手を使ったのか知りませんが、僕はそれがとてもよかった。

さらに、ビルの下が大騒ぎとなり、たまたま通りかかったマフィアのボスの車が警察に見つかります。そしてその車に、ロージャックの昔の彼女でジャズ歌手のシェリー・マクマホン(ジャネット・リー)が乗っている。警察はロージャックにきつく当たるのですが、ロージャックは事故説を通す。この警察に刑事レズニッキ(J・D・キャノン、写真3右)がいて、徹底的にロージャックをいびります。後の「警部マクロード」のようにお笑いキャラでないキャノンがとてもいい。って、この映画で覚えたんですけどね。

警部がバリー・サリヴァン(写真3左)ですが、オールシネマ・オンラインでは記述なし。ほかにロージャックのエージェントにマーレー・ハミルトン、エリナー・パーカーの父で大富豪役にロイド・ノーラン、マフィアのボスがジョー・デ・サンティス、その弁護士がハロルド・グールド、別の弁護士がジョージ・タケイ、マフィアの手下がウォーレン・スティーブンスという顔ぶれです。見たい人は見たいと思うだろうな。ついでに言うと、ジャネット・リーの歌の吹き替えをやっているのが、「グレート・レース」でナタリー・ウッドの歌を吹き替えたジャッキー・ウォードです。ジョニー・マンデルとポール・フランシス・ウェブスターのこの曲も好きだな。

で、僕がどこに惚れたかと言いますと、テレビでは舌鋒鋭い正義漢を演じているロージャックが、金持ちの妻に頭が上がらないところ。そして落ちそうになった妻を、助けられそうなのに助けず、自分が突き落としたとも自白できない。そのだらしなさがツボでした。終盤、妻の父から意見され、“私は(ペントハウスの)手すりを歩くような危険な生き方をしてきた”と言われて、手すりにのぼって歩いてみるという、その情けなさが抜群です。

しかしエリナー・パーカーって、夫をだまして車椅子に座っていたり、尼僧院から来た二十歳そこそこの女に海軍大佐を取られたり、そしてこの映画と、敵役ばかりですね。あとは「ブラボー砦の脱出」ぐらいしか見ていないけど。あ、別に映画検定の設問にしなくていいからね。

ジャネット・リーが住んでいるアパートが、ロサンゼルスのフリーウェイに囲まれた真ん中にあるというのもよかった。その屋上を彼女は“ツリーハウス”と呼んでいます。公開時にその言葉には気づかなかったけど、子供のころ庭の木に作ってもらう子供の隠れ家ですね。原題が「アメリカの夢」(アメリカでの公開名は「See You in Hell, Darling」みたいですが、ビデオのタイトルは原作と同じ)。僕はノーマン・メイラーの本を読んだことはありませんが、この映画から察するに、1950年代のアメリカ黄金期にも、きちんと物事を見据えていた人なのでしょう。

無視してしまうには惜しいB級ギャング映画です。


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