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2015年09月17日15:02

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フォルムの実際 ブグロー再現

フォルムの実際 ブグロー再現
 日本の西洋絵画は、19世紀当時のフランスアカデミック絵画を導入する事で本格的に始まっている。だが、当時のアカデミック絵画、今では19世紀フランス絵画の代表的画家とされるブグローの作品を、現代の一般的な日本の油彩画技術では再現できない問題が発生している。確かに、黒田清輝達は、当時のアカデミック絵画を学んでおり、それを日本に伝えている。サロンにも入選しているので、黒田の技術は確かなものだった。だが、日本の西洋絵画、つまり油彩画は、その後、印象派からポスト印象派、そして近代西洋絵画の流れに飲み込まれて、19世紀当時のアカデミック絵画の技法を失ってしまう。一般化された油彩画の描き方は、アカデミック絵画とは掛け離れたものとなってしまったのだ。これは、世界的な傾向であり、19世紀以降の西洋絵画の流れが、そうなっていたので、日本だけの問題ではない。日本の西洋絵画は、その流れに乗っただけなのだ。だが、決定的な違いがあった。西洋では、印象派以前の古典絵画の技術が根付いており、それが消えた訳ではなかったからだ。日本では、黒田達が持ち込んだ、19世紀のフランスアカデミック絵画の技法は、咀嚼される間もなく、新たな西洋絵画の流れに流されてしまう。そして、石膏デッサンだけが残った。これが、石膏デッサンと油彩画の間の乖離の原因になる。石膏デッサンは、熱心に行うのだが、そこから油彩画に展開する過程が抜け落ちてしまっていた。デッサンはアカデミックな描法で描かれるが、油彩画になると、途端に荒い印象派以降の油彩画風になってしまう。油彩画とはそういうものだと頭に刷り込まれてしまっている人も多かったのではないだろうか。それが、世界の油彩画の流れだったため、疑問に思う人も少なかった。日本の油絵画家も、印象派以降の描法を取り入れる事で西洋絵画に追いついたと得意になっていた人もいたぐらいだ。だが、西洋古典絵画の研究は、かなり遅れた状態だった。日本のスタンダードな油彩画技法は、西洋絵画の歴史から見ると、やはり偏ったものだったのだ。技法の幅が非常に狭く、そのために、ブグローのようなアカデミックな油彩画を描く事ができなかった。現代では、状況は変わってきていて、日本でも古典絵画の研究が進んでいるのだが、ひと昔前の日本の油彩画は、そんな状況だった。日本でも、ブグローを再現できる画家はいるのだが、彼らの使う技法は、日本の一般化された油彩画技法とは別物なのだ。
 同じキャンバス、同じ油絵の具、同じ道具を使いながら、どうして違った油彩画になるのだろうか。そこには、秘密があって、キーワードになるのが新古典派だった。フランスで大きな力を持っていた新古典派は、ルネッサンス期のラッファエロの作品を油彩画の理想として高く評価していた。ルネッサンス期の油彩画は、まだ油絵の具に蝋が入っておらず、絵の具を盛り上げるような技法は使われていなかった。つまり、非常に平らなマチエールとなっていたのだ。その後の、レンブラント等の油彩画と比べれば、その違いがはっきりと分かるだろう。油彩画独特のマチエールを出すために、画家は、わざわざ油絵の具に蝋をまぜた。蝋の入った絵の具を使う場合、普通なら筆跡が残り、盛り上がってしまうはずなのだが、ルネッサンス期のラッファエロをお手本とした新古典派の画家達は、絵の具で出来る凸凹のマチエールを嫌って、意図的に、できるだけ平坦な絵肌になるように描いていった。現代市販されている蝋(蝋と同じ作用をする添加物)の入っている油絵の具でブグローの絵を再現するのは、非常に難しく、独特の描法が必要になってくる。不必要なマチエールができないように細心の注意を払いながら描き進めなくてはならない。このあたりの描法は、アングルは徹底していた。この方向性は、19世紀のアカデミック絵画の画家達に共通する技法だ。印象派の絵画に影響を受けているサージェントとアカデミック系の画家ブグローの絵画とを比較してみると分かりやすいだろう。サージェントは、19世紀のアカデミック教育を受けた画家だったが、印象派からも強い影響を受けており、描法も大胆に変化していく。ブグローとサージェントは、同じ時代を生きた先輩後輩にあたるが、その絵画スタイルには大きな違いがある。多くの人は、サージェントのような大胆な筆致を生かした描法を身につけようと試みるのだが、これが上手くいかない。その原因は、サージェントのベースとなっているアカデミック教育にある。サージェントの大胆なタッチを生かした描法を支えているのは、アカデミックな手堅い基礎能力と、印象派の持つ即興性の融合なのだ。どちらが欠けてもサージェントの油彩画にはならない。ブグローの作品には、サージェントのような即興性は、あまりないのだが、アカデミック絵画としての完成度は非常に高く、現代、ブグローの作品は、油彩画の基礎教材として広く使われるようになってきている。ブグローは油彩画の基礎を学ぶ上で非常に重要視されている。もちろん、現代アートへ進もうとする人にとっては無用の長物と思えるかも知れないが、現代絵画としての油彩画にとって、19世紀のフランスアカデミック絵画が、ベーシックな教材となっているのは事実だ。





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