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2015年05月13日18:59

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5月12日中之島どくしょ会

台風接近の中で開催された作家対談。
荒天を全く感じなかったのはビルが堅牢なのかお話が面白かったからか?


第11回中之島どくしょ会
@フェスティバルタワー37階
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課題図書
阿蘭陀西鶴(朝井まかて)
宇喜多の捨て嫁(木下昌輝)



お二人とも大阪文学学校のご出身です。

【作家修業】

朝井まかてさん。
ライターとして永く文章をかくことに携わってきて
小説は書けない書きたいという夢を「プールの底にしずめてきた」のですが
46歳のとき、書けるのはあと10年だろうか、1作でもいいから小説を書きたい、と思って文学学校の門をたたいたそうです。

文学学校ではとにかく書いてきなさい、といわれて
10人くらいにコピーして渡し翌週グループで合評するという方式だそう。
「根にもってるわけじゃないですが、ボロカスに言われたことはよく覚えてます。
最後まで読んでああおもしろかった、で終わっていいんですか?とか」 

木下昌輝さんもライターご出身です。
学生時代、ご実家の町工場が500万の不渡りをくらったりいろいろあったそうで。
高校時代から作家を志ざし、とりあえずライターになったら
「資本がいらない天国みたいな職業」だと思われたとか。
文学学校での評価はよかったけれど
チューターには「プロット通り書けてるけどプロット通りにしか書けてない。そこから先にいかないと」と言われたそうです。
予定調和ってことですね、と浅井さん。

「不況でライターとしての仕事が減ってきたとき、
書いたものが『オール読み物』で2次審査に残ったんです。
それで1年間小説でがんばろうと思った」
結果として『オール読み物』の新人賞受賞、
ときくとトントン拍子のようですが
500枚を3年間書けばなんとかなる、ときいて、
それなら1年間で1500枚書こうと思われたあたりがすごい。
やはり並ではありませんね。 


【阿蘭陀西鶴】

西鶴は、きものの柄や髪型など他の資料を探しているときに、
ふと学生時代以来(朝井さんは甲南女子大文学部卒)手に取られて。
20代ではわからなかった面白さに
これをテーマに書こう!と思われたところで      『恋歌』(れんか)で直木賞受賞!
「受賞してからの3ヶ月は本当にものすごい状態で大変で」
本作の主人公を、西鶴本人から盲目の娘に変更したのだそうです。

実際に西鶴に盲目の娘がいたかどうかは諸説あるそうですが
視覚情報を書かずに西鶴をどう描くかは大きなチャレンジでした。

国立盲学校の取材をしたり、
神宮前にある《ダイアログ・イン・ザ・ダーク》http://www.dialoginthedark.com/に行ってみたり。

 木下さんの評。
木下「近松門左衛門がでてくるでしょう? 
それでワクワクしたんですがすぐ(西鶴を)ほめちゃうのでがっかりしました。
もっとトゲトゲしさを出してもよかったんじゃないですか」
朝井「私にとっての西鶴はああなんです。近松は若かったし、お互いは嫌いだったでしょうけれど」

木下「ちょっとしか出てこないキャラクターはどう作ります?
資料がない人とかは?」
朝井「フィクションの部分を増やします。
どこまで真実ですか?ときかれて私の創作ですというとがっかりする方がいらっしゃるんですが
フィクションを通してしかせまれない真実があるのではないでしょうか」
木下「史実とは何かということですね。
昔と今では価値観も違うし」
朝井「歴史なんて、旧家の蔵から資料が出てきたら
パッとかわってしまうようなものなんです。
史実にとらわれると物語はすすまない」

木下「書きにくかったことはなんですか」
朝井「初めてプロットを作らずに書いたことですね。
異論がでるかなとも思うけれども、これが私の西鶴です、と居直ってます(笑)」 


【宇喜多の捨て嫁】

宇喜多直家が主人公でありながら、色々な視点から書かれているのが特徴です。
なぜ直家を、という質問には、もともとさらに有名でない武道家を主人公に、下克上の時代の空気感を描きたかったという裏話。
物語が時と空間をこえていろいろに拡がりながら最後にぴしりとまとまっています。

「連作短編なので、出たとこ勝負のプロットなしでした。
息子の代で滅んでいるので資料は限られているのですが、逆に読むのはラクでしたね」 

朝井さんの評。
朝井「これがデビュー作!?手練れだなーっと思いました。
複数の主役というのは私も考えていましたから、やられた、という感じですね。
それと、言葉遣いや感情が近代的で自由だな、と」
木下「言葉遣いで読者に立ち止まって欲しくないんです。
うちもの、と書いて剣術とルビをふったらつぶれたとか失敗もあって。
当時のとおりに書きすぎるとわかりにくい」
朝井「なるほど。物語がうねるままに書いてあってその熱が伝わってきます。
諱(いみな)についての話もでてきますが、最初にここまで強調しない方が
あとの効果があがったなという感じもしました。
どこまで読者の知識を当て込むかは難しいですね」

木下「歴史ものはファンタジー小説なので説明しなければいけない。
でもあくまでエピソードで表現しないと」 

【時代物を書くということ】 

木下「現代小説を書きたかったのですが歴史小説で受賞してしまったので(笑)
歴史のなかの無名な人を書いていきたいです。
今の世の中は平和なようですが、世界的にはまだ戦国時代なんですよね。
そういう中にある人を救えないかと思っています」 

朝井「こころざし高いですねー!
私も時代小説を書くとは思っていなかったので
じりじりと現代に近づいてます。
昭和を書きたいですね。自分の子ども時代。
戦後の名残があって、高度成長があって、バブルがあって」 

木下「僕は実家が町工場だったので職人の話を書きたいです」 

【質問コーナー】
後半には客席からの質問にお答えくださいました。 


問い。資料はどのくらい読みますか。資料代はどのくらいかかりますか。
木下「僕は貧乏なので、図書館で借ります。
それでコピーしたり、重要な物に絞って買う」
朝井「資料代はめちゃくちゃ使います。
本買うのが好きなんですよ。スーパーのカートに2台分くらいとか。
買うのは目下の作品資料に限りません。
学者の方々が年月かけて調べたものの上前をはねてるので感謝をもって(笑)」 


問い。何で書いてますか。何時間くらい書きますか。
木下「ノートとシャーペンです。手書きだと字が汚いので見直さないから筆が進みます。
カフェとかマクド、ファミレスで書いて、帰って読む。朝は10時までには起きてカフェに行って・・・夜の7時から10時に帰って書く」
朝井「ライターの仕事で慣れたパソコンです。
プロットを考えるときは付箋に1つずつ書いてノートに貼っておいてシャッフル。
年表もつくります。社会の動きもふくめて」
木下「年表は僕もつくります。
小説の舞台になる場所に行って、インスピレーションがわかなかったら、かえって腹がすわって書き出します」
朝井「夜中にそうか!と思ったり。
書き出すと動き出します。結論はきめてません。
担当さんにプロットを見せるんですが実は一夜漬けで。そのとおり書いてませんね。
締切があるから書きますが・・・最近は締切も交渉したりして」
木下「交渉はしたことないな。ライターをやってたので、締切を守らないと
仕事がこなくなるような気がしてこわいから」 


問い。木下さんに。ある日「書き方がわかった」とおっしゃいましたが?
木下「まず登場人物の価値観の変化をかかないといけない。
あとはエピソードで説明してすすめる、とか・・・
ハウツー本に書いてあるようなことですけれども、実感としてわかりました」 


問い。どうしたら書けるようになりますか。
朝井「初めて文校で書いたときは、最後まで書けた!と
思いましたが合評がこわかったです。
前のめりのものすごい覚悟で入ったものですから。
いまでは「ここがいい」と言われると逆に
そこから脱したいと思ったり。
いいシーンを書くと照れてしまいますがかかないといけませんね」
木下「勧善懲悪の話は難しいです。
ごまかしがきかない」
朝井「苦しいけれど書くのが幸せです」 

問い。気分転換に何をしますか。
木下「風景が変わったほうが書きやすいですね。
電車にのったり」
朝井「何もしません。あ、踊ってますね。
明け方に音楽かけてお風呂場で踊ってる。
何の音楽って・・・イーグルスとかドゥービーとか。
夫は寝てます。全く生活が合ってない」 

問い。どんな作家が好きですか。読書体験は。
木下「浅田次郎とか司馬遼太郎が好きです。
『珍妃の井戸』では現代風に歴史小説を書いていますね。オチがわかるのに説得力があるし・・・」
朝井「いまのお二人はもちろん、そのほか池上正太郎、藤沢周平。
学生時代は常盤晋平の翻訳ものも好きでした。専門書も好き。
今も読んでいるのは漱石。ほとんどの言葉を作ってくれている。
高校の時は遠藤周作の『沈黙』。今ももっています。漫画も好き」

 問い。木下さんは武道をされるそうですが。
木下「京都でライターをしているとき、カメラマンがやっていて。茶帯なんですけど面白い。
生き方のしぐさがわかるような気がしました」
朝井「来月から古武道はじめます。
胴着と袴がいいですね。形から入ります」 

問い。木下さんは小説家志望なのにどうして理系に進学されたのですか。
木下「理系選択は高1のときに数学が得意だったからです。
その後は‥ですが。
バレー部で交換日記があって、書いたら面白いって言われて。
もともと運動は得意じゃなかったのですが
部誌で居場所ができたというか。じゃあ小説家になろうと。
文転しようかと思ったら、友達が、小説家って書けなくなるとエロ小説かかされるらしいぞ、そうならないように引き出し増やしとけよ、って。
それなら文系より理系の方が引き出しは増えそうだし建築は小説に近いかなと
(木下さんは近大理工学部建築学科卒です)」 

問い。次の作品について。
木下「5月27日にアンソロジー”大坂城”。7月に単行本」
新撰組が怪物になる!?面白そうです。
朝井「夏の終わりにいまの連載がまとまります」
ヤブ医者のおはなし。江戸時代の子育てや病との向き合い方?ユーモア系、だそうです。   


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