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2015年04月05日22:54

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「想像」してごらん――ジョン・レノンの言語感覚

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4月1日に亡くなったシンシア・レノンの人となりがあらためて気になって、彼女が2005年に上梓した自伝『ジョン・レノンに恋して』(河出書房新社)を図書館で借りて読んでいるのだけど、アート・カレッジ時代の、札付きの不良と優等生の女の子のミスマッチな出会いからやがて熱烈な交際に至るまでの回想は、まるで少女漫画の王道パターンを地で行くような話で、読んでいて微笑ましくもこそばゆくなる。たとえば、

「初めてジョンを見たときは、「最低、全然タイプじゃないわ」と思った」(シンシア・レノン『ジョン・レノンに恋して』)

なんて文章は、いかにも少女漫画的で「最高」である。

少なくとも、1950年代以降の、アメリカ型のライフスタイルが世界中に普及してからの青春時代の過ごし方として、ジョンとシンシアの物語には神話的な次元での、殆ど映画のような美しさがある。

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付き合いたての頃に、ジョンからシンシアに送られた「イタい」ラブレターも現物付きで紹介されているのだけど、その熱烈で、性急で、畳み掛けるような恋愛感情の迸りは、ちょっと整えるだけでそのままビートルズ初期の楽曲の歌詞に使えそうな文面。「I Love U」と「You」を「U」と表記しているところなどは、プリンスの20年先を行っているラジカルさ。シンシアによると、このラブレターの「I Love You Yes Yes Yes」というフレーズが、後のビートルズの大ヒット曲「シー・ラヴズ・ユー」の「She loves you, yeah, yeah, yeah」の元になったとか。言われてみれば、たしかにそうかもしれない。

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なにしろ、この素朴で熱烈なラブレターにも、後に大々的に開花する、型に捉われないフリーフォームな言葉遊びを駆使して、誰も見たことがないまったく新しい心的風景を描き出すジョンの詩的才能の片鱗は窺える。

人間的現実は言葉という「想像」の産物こそが構成するのだ――という、ある意味言語構成主義的な洞察に、若き日のジョン・レノンはすでに達していたのかもしれない。
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