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2015年03月27日13:14

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現代の吟遊詩人の永遠の旅立ち――ジョン・レンボーン逝く



いままで色々な音楽を聴いてきたけど、ペンタングルのファースト・アルバムほど「唯一無比」という言葉の似合うアルバムも滅多にない。フォークでもあり、ジャズでもあり、ブルースでもあり、トラッドでもあり、ロックでもあり、またそのすべてを超えるような何かであり、他に似たような音楽がない、音楽のジャンル分けの無意味さ、本物の音楽の名付け難さを痛感させてくれる、空前絶後のユニークな一枚。一曲目「Let No Man Steal Your Thyme」のイントロのダニー・トンプソンによる弓弾きベースの響きは「サイケ」すら突き抜けて誰も見たことない風景を開示してくれる。独創的なミュージシャンが綺羅星の如く活躍していた60年代後半当時の水準で考えても、並外れて突出したオリジナリティを実現していたのが初期ペンタングルといえるだろう。そして、そのペンタングルの独創性を中心的に担っていたのが、クラシックや古楽の教養を持つジョン・レンボーンの存在に他ならなかった。ジョンがいなければ、ペンタングルは、スティーライ・スパンやフェアポート・コンヴェンションとあまり変わらない、割と普通のブリティッシュ・フォークロック・バンドになっていたと思う。さらにペンタングルがいなければ、レッド・ツェッペリンのアコースティック音楽〜民族音楽の摂取の仕方もまったく違う形になっていただろう。そう考えると、ジョン・レンボーンこそは、70年代ブリティッシュ・ロック黄金時代の偉大なる震源の一つであったと言っても過褒にはあたるまい。また、バッファロー・スプリングフィールドのセカンド『バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』のジャケットには影響を受けた様々なミュージシャンの名前が列記されているが、その中にロバート・ジョンソンやジミ・ヘンドリクスなどと並んで、ジョン・レンボーンの名前もある。ジョン・レンボーンの音楽的アイディアは、英国に限らず、遠く米国西海岸にも及び、サイケ以降のロックの進むべき道に啓示を与えていた。ニール・ヤングやスティーヴン・スティルスといったバッファローの残党が、後に「ディスカバー・アメリカ」という方向に向かうのも、ジョン・レンボーンの示した中世にまで遡るルーツ探究の姿勢に倣ったものだったのではないだろうか。ペンタングル解散後、自身のバンド、ジョン・レンボーン・グループでは、中世バラッドや古楽の曲を取り上げ、中世への音楽的な旅が大々的に展開されている。「現代の吟遊詩人」という呼称は、まさにジョン・レンボーンのためにあったように思う。







ペンタングルのオリジナル・ギタリスト、ジョン・レンボーンが死去 - amass <http://amass.jp/54176/>
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