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2015年02月08日16:34

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2/6 写真展「奈良原一高 王国」@国立近代美術館

この展覧会を観に行ってよかった。写真におけるコンセプトとテーマのこと、写真に自身を投影する(或いは、自己を探る、見出す)こと、、、、難しかったけれど、とても勉強になりました。

まずはHPから抜粋

http://www.momat.go.jp/Honkan/naraharaikko/

「奈良原一高(1931年生まれ)は、戦後に登場した世代を代表する写真家の一人として知られます。彼が1958(昭和33)年に発表した「王国」は、北海道の修道院と、和歌山の女性刑務所という、それぞれ外部と隔絶された空間に生きる人間存在を見つめた作品です。ほぼ無名の新人の個展としては例外的な反響を呼び、鮮やかなデビューとなった1956年の個展「人間の土地」に続いて、極限状況を生きる人間というテーマを深化させた本作は、日本写真批評家協会賞新人賞を受賞するなど、奈良原の評価を確立するものでした。
 今回の展覧会は、2010(平成22)年度に株式会社ニコンより寄贈を受けたプリント全87点により、この初期の代表作「王国」を紹介するものです。」

「所蔵作品展「MOMATコレクション」では、「奈良原一高 王国」展と連動して、奈良原一高や奈良原と関連する作家の作品を多く出品します。
3階の9室では奈良原が鮮烈なデビューを飾った「人間の土地」より〈緑なき島―軍艦島〉14点、〈火の山の麓―黒神村〉8点を展示。(中略)また、2階の11室では奈良原がアメリカに滞在中、1973年から74年にかけて制作した「ブロードウェイ」より12点を展示します。本シリーズは、ニューヨークのブロードウェイを、南から北へ、各交差点の真ん中に立ち、魚眼レンズを使って四方向を撮影した写真4点を一組として構成したものです。「王国」を制作する前後、1950年代から1970年代にかけての奈良原の軌跡の一端をご覧いただけます。(後略)」 

今回展示のものは、1978年版写真集(「沈黙の園」60 点、「壁の中」30 点、全90点からなる二部構成)をほぼ踏襲したもの。 1971年に中央公論社から「映像の現代1」として刊行された写真集『王国』に第三部として掲載された「人間の土地」シリーズは別展示室で一部見る事が出来ました。

「王国」では北海道のトラピスト修道院(「沈黙の園」)と和歌山の女子刑務所(「壁の中」)を、「人間の土地」では長崎の炭坑の人工島(「緑なき島―軍艦島」)と桜島降灰被害地域の孤立集落(「火の山の麓―黒神村」)を2部構成にして発表。
修道院は自らの意思で、刑務所は法的裁きによって、共に己の「罪」と向き合うために外界と隔絶された場所。同じようでありながら大きく異なり、対極でありながら重なるものが多い特殊な場所(Domain)のルポルタージュなんですね。
一方、軍艦島は採鉱のために人工的に作られた島で多くの炭坑労働者とその家族が生活した場所、黒神村は度重なる桜島噴火による降灰で孤立集落となった地域、両者は人工と自然という両極でありながらも、どちらも厳しい環境の中での慎ましくも逞しい人間の営みを描いています。

一見両極にある事象の中にこそ、その共通点を見出し、対比させる事によって、本質的な問いに対する答えを探ろうというのが奈良原一高のコンセプトなんですね。両極〜共通〜対比で、テーマがさらに明確に、さらに複雑で深淵なものになっている様に感じました。テーマだけで空回りしていても表現出来なければ意味がなく、そのためにはコンセプトを持つ事はとても大事、そしてコンセプトを持った事でそこから生まれる何かもあるのかなぁ、と思いました。

さて、「王国」ですが、奈良原一高はそのタイトルはアルベール・カミュの中篇小説集『追放と王国』(1957) にちなんでいると言っています。奈良原は、同書におさめられた一篇「ヨナ」の結びにある以下の一節を、作品発表時に引用しています。

 
「その中央にヨナは実に細かい文字で、やっと判読出来る一語を書き残していた。が、その言葉は、Solitaire( 孤独) と読んだらいいのか、Solidaire( 連帯) と読んだらいいのか、分からなかった。」
それから、ルポルタージュと上述しましたが、奈良原は自分の写真を「パーソナルドキュメント」と呼んでいるそうです。
王国、孤独と連帯、個人的記録、、、う〜ん、なかなか難解です。ひょっとしたら、同館同時開催の「高松次郎ミステリーズ」も観覧すればもう少し理解出来たかもしれません。何せ、高松次郎も奈良原も同時代の人、交流もあったようですし、60〜70年代の「孤独と連帯」を共に味わった人たちですね。その時代の雰囲気、昨年の赤瀬川原平展を思い起こしながら、私も少しずれていながらも同じ年代で共感出来るような気がします。

何れにしても「王国」は画面全体に静謐さが流れており、時の刻みが非常に緩やかであったり、或いは止まっているのかとも思われるものもあり、それがまた永遠で目眩を起こすような果てしない感じがするものがあって、観ていて、息が詰まる思いがしました。実際、息を止めてしまっていて、時々思い出しては「ぷっはーっ」と吐き出す始末。生きる事、孤独、閉塞感、疎外感、存在、繋がる事、、、幾つものキーワードが連想ゲームのように頭を去来。余韻長い展覧会でした。

長くなったので、印象に残った写真のうち幾つかをご紹介して終わりにします。3月1日まで。

「人間の土地:緑なき島―軍艦島」フォト

「人間の土地:火の山の麓―黒神村」フォト

「王国:沈黙の園」
フォト フォト フォト フォト フォト

「王国:壁の中」
フォト フォト フォト フォト 

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