mixiユーザー(id:5462733)

2014年12月29日10:52

811 view

フォルムの実際 18世紀から19世紀 巨人伝説

フォルムの実態 18世紀から19世紀へ 巨人伝説
 ゴヤも幾つかの巨人の絵を描いている。我が子を食べるサトルヌスも巨人と言える程大きい。ゴヤの絵画ではおどろおどろしい怪物のように描かれているが、ギリシャ神話でのサトルヌス(クロノス)は神々の王であり、その地位を子供に奪われると言う予言を信じて我が子を飲み込んでいた。飲み込まれていたのも神の子なので不死であり、飲み込まれた子供はサトルヌスの腹の中で成長していた。ゼウスによってサトルヌスの体内から助け出された兄弟達は、ゼウスと協力してサトルヌスと戦う。その時は、サトルヌスは敗れるのだが、後に、大群を率いてゼウス軍との大戦争に発展する。サトルヌスの復讐戦がティタノマキアと言われる戦いだ。この戦いでもゼウスはサトルヌスを返り討ちにして勝利する。サトルヌスはゼウスの父に当たるので、旧世代と新世代の戦いを象徴している。父と息子の対立は西洋の物語のテーマとして良くでてくる。
 ゴヤが描いたとされていた巨人の油彩画が実は弟子の作品の可能性が高くなった。巨人の絵を所蔵していた美術館は、検証の結果ゴヤの真筆ではないと発表した。有名な絵画で山脈の向こうで巨人が立ってファイティングポーズを取っている。山脈のこちら側では人々が馬車に乗って逃げている姿が描かれている。馬車、巨人、逃げる、と言うキーワードでネット検索するとほぼ進撃の巨人で埋められる。描かれた巨人は、ファイティングポーズを取っている。何かと戦おうとしている姿だ。けっして、逃げる人々を襲おうとしている訳ではない。スペインに攻込んで来たナポレオン軍に立ち向かっているのではないか、と想像させる。つまり、この巨人はスペインを守ろうとしている巨神なのだ。そう言う解釈が成り立つような構図になっている。進撃の巨人にも、人間達を守ろうとする巨人が登場するように、巨人は人間を襲う怪物的悪の化身ばかりを表現するものではない。基本は悪でも善でもなく、巨大な存在を意味する。それは自然その物でもある。雨は大地を潤し、そよ風は心地よい。しかし、台風となれば大きな被害を及ぼす怖い存在となる。普段は恵みを与えてくれるが、いったん暴れ出すと大きな被害を及ぼす。そういった自然のありようを巨人として表現している。怖い敵ともなり、人間を守る味方にもなる。スペインの人々は、この巨人がスペインを守ろうとしていると感じてこの絵画に強い思いを持つに至ったのだろう。ゴヤの弟子の作品である可能性は非常に高いのだが、ゴヤとまったく関わりがなく制作されたとも言えないのだ。昔の画家は、弟子が協力して大作を制作するのが普通だった。この弟子もゴヤの制作を手伝っていたと言う記録もある。その逆もあり得るのだ。弟子の描いた絵画を見てゴヤがアドバイスをしたり手を入れていても不思議ではない。スペイン人の思いが描かれており、ゴヤ自身がこの巨人を描いた作品を気に入っていたのは事実のようだ。ゴヤの真筆とは言えないものの、ゴヤと深い関係性がある絵画だと言う判断は正しいように思える。描法としては、ゴヤらしくない所がいろいろ存在する。巨人の絵では雲をペインティングナイフで描いているのだが、ゴヤは、描写にペインティングナイフをほとんど使っていない。画家には、ペインティングナイフを良く使う人と、ほとんど使わない人に別れる。好みの問題で、使わない人はほとんど使わないのだ。ゴヤは使わないタイプの画家だった。重要な雲の部分をペインティングナイフで描くと言う発想はゴヤはしないだろうと思える。ゴヤがホワイトを厚塗りする場合は、太めの豚毛の筆を使っている。筆を使ってホワイトを厚塗りするタイプの画家は、それをペインティングナイフで行なう事はほとんどない。ペインティングナイフでホワイトを置いた場合も上から筆でさらに加筆する場合が多い。巨人の体のバランスも、やや狂っている。この構図だと巨大な厚みのある背中がメインとなるのだが、それに比べて顔が大き過ぎたり、臀部が小さ過ぎたりもする。ただ、ゴヤもデッサンが狂っている絵を沢山描いているので、ルーベンスのようなデッサンを想定するのは無理な話しなのだろう。全体的な雰囲気としては迫力のある絵画に仕上がっている。気持ちを描いた絵画なので、こまかなデッサンの狂いは大した問題にはならない。ゴヤと弟子との共作と言うのは言い過ぎだろうが、この絵画にはゴヤの思いも込もっているのは確かだ。この巨人の絵画は、スペインの歴史を知らないと、ただ怪物を描いただけの絵画だと思ってしまう人もいるかも知れないが、スペインの人々にとっては特別な絵画でもある。
 ギリシャ神話では八百万の神が登場し超人的な力を発揮する。また人間の女性とも交わって神と人間のハーフも誕生。ヘラクレスはその代表格だろう。巨人伝説は世界中に存在し日本の民話にも幾つもの巨人が登場する。人間が感じる恐怖や畏怖をイメージ化している。精神世界の怪物で、恐竜等の化石を見つけて、巨人が存在したと信じた人々もいただろうと思われる。巨人のルーツを特定するのは難しいが、巨人が人間に強いインパクトを与えるのは現代も同じだ。巨人は、圧倒的強さ、圧倒的恐怖を擬人化したものだ。進撃の巨人もそんな巨人をテーマにした物語だが、現代でも巨人に強く心を揺さぶられるのは太古の遺伝子的記憶によるものだろう。実際に人間よりもはるかに大きな動物は存在した訳で、そんな巨大な動物と遭遇した時の驚きは凄まじいものだっただろう。映画のキングコングも、ゴリラとの出会いがルーツになっている。アフリカを探検していたヨーロッパの探検家が、ゴリラと遭遇し、アフリカには巨大な猿がいるとヨーロッパで話したら、最初はまったく信用されなかったと言う記録がある。
 ギリシャ神話はヨーロッパ中に深く根付いていた神々の物語だが、神話を題材にした絵画は崇高な絵画として認められていた。キリスト教が普及した後もそれは同じで、太古の地球創造の物語としてギリシャ神話は語られていた。どうやって地球が誕生したのか、と言う疑問に、神が作ったのだろう、と答えた方が分かりやすい。神々の物語は、人が人になる前の物語であり、神々が人を人にしたのだ、と解釈する。人のような生き物は存在したが、まだ動物的で、神々によって知恵を授かり、農耕を教わり、人として生きる術を神々から教わった、となっている。ヨーロッパは一神教の世界だと言われるし、それは事実だろうが、多くの神々が好き勝手に暴れ回るギリシャ神話の世界も存在する。ギリシャ神話を宗教とは捉えてはいないだろうが、巨人が暴れ回る過去の世界があった、と人々は思っていた。ギリシャ神話に登場する巨人族は神だ。神の中にも、美しい神と醜い神がいて、醜く生まれた神は親に疎まれて地下に落とされたり、結構酷い目にあっている。ギリシャ神話を知っている人にとって巨人は、さほど奇異な存在ではない。ギリシャ神話の中で、大きな盛り上がりを見せる巨人達との戦いがある。それが神々の王であるゼウスとギガンテスと言う巨人族との戦いだ。ギガンテスは複数形で単独ではギガス、この戦いをギガントマキアと言う。どこかで聞いた事のあるような言葉の響きだと思う人もいるだろう。日本のゲームには、良くギリシャ神話が元ネタとして登場する。ゲームをやっている人にとってはギリシャ神話はおなじみの物語ではないだろうか。ゲームをまるでやらない人には、理解し難いだろうが、魔法を使ったり瞬間移動をしたり、巨大な怪物と戦ったりと、ギリシャ神話の物語の中に迷い込んだような仮想体験をゲーム内ではできる。こう言った精神世界の物語に人間は非常に強く影響を受けてしまう。ゲームだから、漫画やアニメだから影響を受けてしまうのではない。精神世界は、人間の脳が異常に発達した結果獲得した領域でもある。ネット空間も精神世界のイメージに似ている。現実世界ばかりを見ていては、人間が持っている精神世界を理解できなくなってしまうのだ。もちろんバランスが大事で、精神世界に飲み込まれてしまい破滅する人も大勢いる。人間の内面表現だとか、精神性は、人間の精神世界がどうなっているのかを考えないと語れない。個人的精神世界と人類共通の普遍的精神世界があると言うイメージになる。実際に見た人はいないので、あくまでも仮定の話しだが、精神世界は、もやもやとした不定形なイメージを擬人化したり、擬態化して表現する事で他の人に伝えやすくなっていく。内面表現を語るには、この人間の精神世界とは何なのかを考えていく必要がある。精神世界に入るには、繊細な感性と強靭な精神が必要だとされる。かなり怖い世界である事も確かなので、その手始めとしてRPG(ロールプレイング)ゲームでもしてみてはどうだろうか。最初は、何の手引書も見ずに自分の今持っている知識や常識だけで挑戦してみることをお勧めする。いかに精神が混乱するか、そのパニックを楽しんでみて欲しい。精神世界とは、とんでもなく不条理な世界でもあるのだ。そしてつくづく思うだろう。精神世界を旅するには、どうしても手引書が必要だと。
 18世紀から19世紀にかけて、どうしてこのタイミングでギリシャ神話を紹介したかと言うと、実は、19世紀にギリシャ神話が関わってくるのだ。いよいよ19世紀編、西洋絵画の世界はますますカオス的世界となっていく。
 画像は、左は、ゴヤ作と言われていた巨人の絵画だが、弟子作となった作品。中はゴヤが描いた巨人。似てはいるが体のバランス等に違いが見て取れる。右の絵は、足が砂に埋もれて動けなくなった2人の巨人の男がこん棒で殴り合っている黒い絵の1つ。不条理な状況が物語の1シーンのように描かれている。どうしてこうなってしまったのか、これからどんな結末が待っているのか、想像すると怖くなるような絵だ。黒い絵を描いていた当時ゴヤは絶望感に支配されていたように思える。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2014年12月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031