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2014年11月24日16:07

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給料日と憂国忌

GHQによる日本解体プログラムの一環である祭日の改称のために「勤労感謝の日」などという俗称が流布しているが、正しくは新嘗祭という日本民族にとって最も大切なお祭りの日であった昨日、久しぶりに新刊書店に行ったら、山崎正一と串田孫一の『悪魔と裏切り者――ルソーとヒューム』(ちくま学芸文庫)、清水正之の『日本思想全史』(ちくま新書)、林房雄の『大東戦争肯定論』(中公文庫)など、欲しい本が一挙に刊行されていて困った。給料日が待ち遠しい。

『悪魔と裏切り者』は、山崎正一と串田孫一という日本を代表するヒューム研究者、ルソー研究者がタッグを組み、哲学史上に名高いヒュームとルソーの「喧嘩別れ」を、主に本人たちの手紙を編集する形で小説的に再現された一冊で、徐々に疑心暗鬼に囚われついにヒュームへの絶縁を宣言するに至るルソーのパラノイアックな内面がスリリングにドキュメントされている。要するに、社交的な人間に対する非社交的な人間の嫉妬と不信がルソーを狂気と孤独に追い込んでいった自滅劇だと僕は思うのだけど、ヒュームとルソーの関係は、ちょっとツルゲーネフとドストエフスキーの関係を思わせるものもある。

新書でありながら400頁超という大部の清水正之の『日本思想全史』は、同著者の『国学の他者像』がとても優れた一冊だったので期待が高まる。排他的な思想と捉えられがちな国学が、実は日常的な対面他者との関係性を実践的に探求した試みであったことを実証的に論じてみせた『国学の他者像』の著者が、古事記から、神皇正統記、国学、さらには丸山眞男からポストモダニズムに至るまでの日本の思想を、如何に通史的に再構成して論じているのか楽しみ。

そして林房雄の『大東亜戦争肯定論』は、現在ではそれほど目新しい主張ではなくなったが、この本こそがそもそもゴーマニズムや田母神閣下の元ネタのようなものであって、また、これがまだまだジャーナリズム上での左翼的言説が強かった60年代に発表されたという刊行当時の「反時代性」を想起しながら改めて読み直したい一冊。今回の文庫化に際して、奥付の日付が11月25日であることに、この本を中公文庫から再刊することを企画した編集者のひそかな拘りも感じた。

――何しろ、次の給料日が11月25日であるということも一つの運命と諦めて、この三冊を明日購入することにしよう。
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