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2026年10月10日11:45

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77歳の爺さんと、陽水・ユーミンの曲に癒される

 10月9日、晴れときどきくもり。
 朝10時、クルマで山中湖に向かう。午後2時、山中湖のマンションで打ち合わせ、というアポがあるので、湘南エリアの渋滞が心配である。が、気を揉めば揉むほど杞憂に終わるもので、江の島周辺と茅ヶ崎の道の駅周辺のみがそこそこの渋滞だった。
 途中でランチを済ませておきたい。必ずと言って立ち寄る絶品のラーメン屋さんは7月末で閉店したので、エネルギーを補給するだけという便宜的な目的になったことが哀しくもある。私は嫌いな食べ物がない。が、他方、これは美味しいという好物が極端に少ない。いや、あるにはあるのだが、それは昆布じめのしめ鯖であったり、名人がつくったお好み焼きであったり、ししとうの甘辛炒めだったり、桜エビをふんだんにつかったかき揚げだとか骨付きラムの絶品バーベキューといった、ひどく限定的な料理だ。
 通り道沿いにある「すき家」で牛カレー700円でそそくさと済ませて、山中湖を目指す。マンションの手前3キロ、山道を登り切ったところに広い駐車場がある。マンションの部屋は水浸しで夏の暑さから腐敗臭がしているので、その駐車場で小休憩することにした。
 隣にご年輩の爺さんがいた。ぼんやり彼を眺めていたら、クルマの外でみかんを食べていた。で、その皮を車内のゴミ入れに入れていた。私が軽く会釈をしたところから会話が始まった。山北町のボロマンションに住んでいること、妻に先立たれたこと、趣味で車中泊の旅をしていること……。77歳になられる、という。
 前歯が1本欠けていた。お金持ちではない。が、その歳で諏訪湖エリアまでクルマを駆って湖を見下ろすところで車中泊するのが好きだ、などという自己紹介をうかがうと、私が望む77歳に比較的近い。その歳まで自分が生きているかどうか怪しいものだが。
 かっこいいな。
 私がぼんやりと望んできた幸せは、お金や名誉といった通俗的な現世利益がほぼ含まれておらず、かっこいい落魄者像だ。意志的に生きていて、孤高の雰囲気があって、それこそ雨露をしのげる程度の家があるくらいの中間層。その上、地球に貢献できたら尚更かっこいい。
 爺さんと15分くらい立ち話をして別れたのだが、乾燥していた心がみるみると潤った。そのことを伝えると、爺さんは「あなたと目が合った時から話をしたいと思っていた。ぼくこそ、会話できて嬉しかった」などと言ってくれた。
 マンションに着いて打ち合わせを2件こなしたら午後4時。早く帰らなきゃ。起伏と極端なコーナーが多い山岳道は、日が暮れると運転しづらい。
 山を下りて国道246号を走っていると日が暮れてきた。
 クルマの運転中は100パーセント音楽を流している。中距離の場合は気分に合わせてお気に入りの曲をカーナビのSDカードに入れるという凝ったことを事前にする。
 アンビエントと洋楽が大半だが、今回、YouTubeのあなたへオススメに挙がってきた井上陽水「新しいラプソディ」に惚れ惚れしたのでDLし、その関連でユーミンの「スイートドリーム」とか来生たかおの「夢の途中」もついでと言っては失礼だが、DLしてみた。
 フロントガラスの向こうは薄墨色の空と、尾灯が灯ったクルマたち。
 たまたまこの3曲が続けて流れていた。
 共通するのは夢(ドリーム)。が、いずれも具体的な夢を描いた歌詞ではない。陽水の歌なんて、歌詞を追っていっても意味はまったく繫がっていなかった。
 いまの私に「夢」レベルの理想なんてないけれど、その下に位置する希望ならある。当たり前か(笑)。
 運転しながらしみじみとした気分になれた。
 案外と、私の夢というのは、こういうなにげない感動であったり、運転できる程度の知力l体力が維持できることであったりするのではないかな。感傷的ではなかったが、万感こみ上げる感情が湧き出てきて、リア充を感じた。
 鎌倉まで運転して来て、強いて食べたいと思えた「丸源」ラーメンに入店。ここの一般的な肉そばに無料の揚げニンニクをスプーン5杯くらいぶち込んで、精神的なエネルギー補給をした。スープを半分ちかく飲んだら、子どもの頃に食べてた鳥取梨の「二十世紀」をすこぶる欲してしまった。喉がそれだけ渇いたのだろう。
 現在の関東は「幸水」や「豊水」でとても美味しいけれど、関西DNAが数本入ってる私は「二十世紀」だな。

 蛇足
 夕刊に「フランスの音楽サービスDeezerは7月、1日に約9万曲のAI生成楽曲がアップロードされていると発表した」という記事があった。
 私はAIに悩まされている、
 好んでアンビエント系の曲を車内で流しているのだが、例えばずっと好んできたエニグマにアレンジを加えてエニグマの曲としてアップロードされていることが多く、しかし聞き込んでいるとどこかオリジナルと違う破綻なき完成曲であることがわかる。
 音楽に限ったことではない。
 生成イラストは見るに耐えない。色を重ね合わせ過ぎる傾向が強いため、配色が汚いのだ。影の付け方とか、人物の輪郭線もヘタ。動画についても違和感があり過ぎる。
 自分は世間一般の感性とかなり隔たりがあるので、この不快感は社会不適応者のそれである。晩年に来て、見ざるを得ないイラストとか好きな電子音楽系の楽曲で、これほどの違和感に苦しめられるとは想定外だった。
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