溶けきれば名前もなくすひとしずく 夏は静かに夏を薄める #短歌
白い匙くるりと空を混ぜるたびさみしさだけが花びらになる #短歌
白すぎる夜の器を抱いたまま不在は甘く羽化して消えた #短歌
畳にはわたしの海がひろがって正座じゃ今日を話せなかった #短歌
砂浜で貝を拾った あのように今日もことばをひとつ持ち帰る #短歌
白色は居心地だけを演出し孤独は黒い珈琲に残る #短歌
「いつもの」と言える場所だけ増えてゆく帰る理由はまだ見つからない #短歌
白い午後ゆっくり湯気を抱きしめて海になれない雲を眺める #短歌
アルバムの端に残った指先もあの日の夏の一部でしたね #短歌
選択肢とは増えるほど減るものだ 塩は三つで世界は足りる #短歌
風吹けばいろは名前を忘れゆき花びらだけがそれを知ってる #短歌
うつむいて咲ける才能ありません だから空だけ見てしまうんです #短歌
痛かったことも海まで来てみれば波打ち際の貝殻になる #短歌
刺さるとは世界に触れていた証拠 銀の小魚 まだ息をする #短歌
しゃぼん玉ひとつ逃がしてしまうほどやさしい悪もいる午後でした #短歌
イヤリング両方失くせばあきらめる 片方だけならわたしは探す #短歌
月だけは複製できずベランダにあなたの沈黙置いて帰れる #短歌
パンジーの影をまたいで歩く午後わたしの影も花になりたい #短歌
掌のひかりをひとつ受け止めて溶けゆく音を夏と呼びたい #短歌
付箋紙を一枚はがす音だけが午後の光にやさしく響く #短歌
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