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2026年06月18日13:39

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6/14 「渋川版御伽草子」のうち《猫の草紙》はじめ東博コレクション展(1)@東京国立博物館本館

5/12に東博の特集企画「アルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」をみた。
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https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1992165545&owner_id=2083345&from=list_diary_title

その時に、6月9日から後期で、狩野山雪筆《長恨歌絵巻》と岩佐又兵衛筆《村松物語絵巻》だけが入れ替えになることを知った。
同時に、本館2階では、関連特集として渋川版御伽草子全23巻が展示されるという。その中には《猫の草紙》という物語もあるのだ。
前回は、疲れてしまって1階の展示も見られなかったことだし、とこの日に再訪。



特別展「百万石!加賀前田家」展が終わったので、日曜日なのにいつもよりは人が少ない。時々ガイド付きの外国人団体客が押し寄せてくるが、彼らは数枚写真を撮ったらさっさと行ってしまう。まして地味な本だけがずらっと13室「宮廷の美術」には誰も留まらない。ほとんど独占。

https://www.tnm.jp/modules/r_exhibition/index.php?controller=item&id=8442
平安から室町時代の美術にはそもそも宮廷貴族が強く関与し、その好尚を反映したものが多く、日本美術史に果たした貴族の役割はきわめて大きいものがありました。宮廷貴族の手によってつちかわれたやまと絵や書の作品、そして宮廷貴族の調度品として用いられた工芸品は後代まで強い影響力をもち、日本美術の重要な位置を占めている。ここでは、平安から室町までの宮廷に源を発する美術の世界をご覧いただく。今回は、特別企画「アイルランド チェスター・ビーティー・コレクション 絵巻と絵本のたからばこ」(4月27日(月)〜7月20日(月・祝))の開催に合わせ、様々な物語を集めて江戸時代に刊行された渋川版御伽草子全23冊を一挙公開する。


「渋川版御伽草子」というのは、享保(1716-1736)の頃、大坂の版元・渋川清右衛門が作った23編の物語を単色絵入りの木版画叢書のこと。
室町時代から江戸時代初期にかけて成立した短編物語を集めたもので、美しい絵巻物や奈良絵本、子供向けの赤本になった物語もある。

《鉢かづき》《物ぐさ太郎》《一寸法師》《浦島太郎》など今でも語り継がれている話、もちろん《酒呑童子》もあった。
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日本神話やインドや中国の不思議話、狐と人、猿と兎、動物の結婚譚など面白い。
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七草粥の起こりやさざれ石のいわれなど豆知識も得る。
ずらりと並んだ23冊、悲しいかな、変体仮名は読めないが、キャプションのあらすじを読み、絵を見るだけで楽しい。

最初に書かれた《文正草紙》は、塩売りで儲けた文正が大出世して公家になるというサクセスストーリー。あれ?どここかで聞いたような…記憶を辿って、検索したら、やっぱりそうだった!
大河ドラマ「べらぼう」で、子供だった蔦重がやはり子供の幼馴染・花の井(瀬川)にあげた赤本(児童書)が「塩売り文太」だったんだよね。おそらく《文正草紙》が元になったシンデレラストーリーなのだよ。こういうのが繋がると妙に嬉しい。
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1冊40ページくらいに絵のページはたった7枚(《猫の草紙》の場合)しかなく、黄表紙などと違ってコテコテの絵でなく、かなりシンプル。だけれど簡潔で親しみやすい線描のやまと絵が却って魅力的で楽しい。

アルバムに収めました。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121446851&owner_id=2083345

そして、本題《猫の草紙》
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この話の発端「慶長7年(1602年)に、猫を放し飼いにせよ、いうおふれが出た」のは史実。もともと猫はペットとして貴族の間で大事に飼われたことは、宇多天皇日記「寛平御記」や藤原頼長日記「台記」に出てくるし、紐で繋がれていた証拠には「源氏物語」の女三の宮の件でもある。
当時京都では人口が増え、鼠害が頻発し困ったからそのようなおふれが出たのだと解釈したが、放し飼いにしたがために、猫の窃盗、転売、それから迷子も増え、愛猫家を悲しませたようだ。



ともあれ、このおふれ以降にこの物語ができたのかな。物語は、ニンゲン目線ではなく、猫と鼠の立場から描かれていてなかなか面白い。

「慶長7年(1602)、猫を放し飼いにするようお触れが出ます。猫は喜んで鼠を捕まえ始めますが、鼠は高僧の夢枕に立って鼠一族の窮状を訴えます。次の夜、今度は猫が夢枕に立って反論すると、さらにネズミが現れ訴えます。僧は親しい共にこのことを語ったそうです。」(キャプション)

展示のあった頁↑は、猫が猫放し飼い令の高札を読んでいるところ。

キャプションには上記のように簡単なあらすじしか書いていないが、1986年刊の岩波文庫『御伽草子(下)』(市古貞次校注)で、全文(挿図入り)を読むことが出来るらしい。この日記では、ネットからの孫引きとなって申し訳ないが、面白い記述があるようなので紹介しよう。

https://nekohon.info/nekonosoushi-otogizoushi/

放し飼いにされた猫は大喜びで外を飛び回り、鼠を捕まえた。困ったのは鼠たち、日頃から「すベての生き物が差別なく御利益を被るように」と願う、とある高僧の夢枕に立って、窮状を訴えた。それを知った猫たちは、またも紐に繋がれるようになってはたまらん、と次の日の夜に高僧の夢枕に立つ。

以下、抜粋(ねこほん。>古典・伝承文学>御伽草子『猫の草子』より)
画像は、『猫の艸紙』(筑波大学附属図書館所蔵)出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100223470
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「鼠めが色々と訴えたようですが、猫の話も聞いてください。そもそも、猫は天竺で恐れをなす虎の子孫です。日本は小国ですから相応してこの姿で日本に来ました。以来、赤ちゃん時代から綱に結わえられて、鼠をとることもできず、水すら自由に飲めず、鳴けば怒られて、苦労してきました。我々の言葉は天竺の梵語なのでこの国の人達には通じないのです。このたび、やっと解き放たれて、心から感謝しているんです」

僧は、禅宗の公案「南泉斬猫」の心を想うにつけても、仲裁したいところだが、それにしても殺生はいけない。これから猫の御飯には鰹をまぜ、折々には田作・鯡(にしん)・乾鮭なんかもやるから、殺生はやめろと提案してみる。が、猫は、そういうものは食事に彩をそえる珍味にすぎず、猫が健康でいるためには是非とも鼠を食べる必要があるのだという。高僧も答えに窮している間に目が覚めた。

するとあくる日の夢に、また鼠が夢に出て、もう我慢できない、という

京中の鼠たちが集まって協議し、京から逃げ出すことにした。周辺国の山々、村々、里々、さらに島々にまで散り散りに去っていく。

そんな中、公家や門跡などに住んでいた鼠が下手くそな歌を残していった

鼠とる猫のうしろに犬のゐて狙ふものこそ狙はれにけり
あらざらんこの世の中の思ひ出に今一度は猫なくもがな
じじといへば聞き耳たつる猫殿の眼の内の光おろそし

僧は、こんな話、誰も信じてくれないだろうと思ったが、その後、たしかに京では鼠が減ったという。


猫が、「自分たちは虎の子孫で、日本サイズになって日本に来た。天竺の梵語は日本人に通じないので、これまで繋がれている理不尽さを訴えられずにきた。やっと願いが叶ってうれしい。」というのは面白い。なるほど、和尚の夢枕に撮った猫は虎猫。白や斑、三毛数々いる中で代表として選ばれたのは、一番虎に近い茶トラ猫とは説得力がある。

一方で、天皇のご寵愛を受けていたことや、「源氏物語」でも柏木に大事にされたことも自慢している。
「源氏物語」で、柏木が女三の宮が忘れられなくてその代替として猫を可愛がったと書いてあったと思うが、猫のご都合主義もまた可愛いね。

それから、猫は、猫が健康でいるためには是非とも鼠を食べる必要があるのだ、と訴えている。和尚は折衷案として「これから猫の御飯には鰹をまぜ、折々には田作・鯡(にしん)・乾鮭なんかもやるから、殺生はやめろ」と提案してみるが却下される。
あはは、この件も面白いね。昔は「総合栄養食」のキャットフードがあるはずもなく、鮑貝を皿にしてねこまんま。それでも人々は、猫は栄養を摂るために鳥や鼠を殺生していたんだとちゃんと理解していた様子。

和尚は、鼠に対しても、鼠がいつも縁の下で和尚のご談義を聞いていると知って「鼠も仏になれる」といい、「人のものを齧ったり悪さをするのをやめよ」と諭す。猫に対しては、禅の公案「南泉斬猫」を引き合いに出して猫を労り「無駄な殺生はやめよ」と強調する。
案外、この話はただの物語ではなく、仏教説話としてもいいのかも?

最後の和歌のうちの一つ「あらざらんこの世の中の思ひ出に今一度は猫なくもがな」は、和泉式部の歌「あらざらん この世のほかの思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな」のパロディ。

いろいろ面白いなぁ。「御伽草子」の展示は本館2階で7月12日まで。

アルバムあります
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絵巻繋がりで、そのほか見たものも紹介。

南北朝時代《不動利益縁起絵巻》
三井寺の智興という僧が病気になったとき、証空という弟子が師匠の身代わりとしてその病を引き受けると、これを哀れんだ不動明王が証空を救うという物語。安倍晴明の祈祷や不動明王が縛られ冥界に赴くなど、不動明王のご利益を奇想天外な物語で描きます。

病を引き受ける証空、それを聞いた母が嘆き悲しむ場面。
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犬も悲しそう。
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病気の智興のそばには病魔がいる。平安時代、病気になるってこういうイメージ。
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「アイルランド チェスター・ビーティ・コレクション」後期
 
伝岩佐又兵衛筆《村松物語絵巻 巻一》
古浄瑠璃の長大な絵巻物で、海の見える杜美術館にも十二巻あるそうだ。
人の顔の特徴があまり又兵衛風に感じないが(だから「伝」?)華やかな濃彩、緻密な装飾で見ているだけでお腹いっぱい。
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狩野山雪筆《長恨歌絵巻 巻下》
後半は、玄宗が方士に命じて仙界にいる楊貴妃を見つけ出す。前期に続き、素晴らしい描写力。裏彩色が施されているという美しい彩色だ。
楊貴妃を失い、寂しく夜を過ごす玄宗。外に飛んでいるのは蛍!
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都を追われ、蜀へ。蜀への道は険しい山道。
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玄宗より楊貴妃を探すよう命じられた方士があちこちに行く
この空間処理が素晴らしい


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展示は2度見たけれど、いくら見ても飽きない楽しさだった。こちらは7月20日まで。

アルバムあります
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