喪失は消失ではないと知るために輪郭ばかりを何度もなぞる #短歌
拾うたび少しやわらぐ輪郭を夜の隅へと座らせておく #短歌
うすいうすい膜のこちらで笑ってる 守られていることも知らずに #短歌
着ない服ばかり増えてくこの部屋で時間だけが僕を着替える #短歌
書き終えて少し静かな夜を置く にじんだぶんのひかりを抱いて #短歌
干しきれず残ったシャツを抱きよせて誰でもない日として眠った #短歌
あたたかさひとつポケットにしまいこみ これわたしの、と小さく言える #短歌
入っていいとも拒まれたとも言わないまま時間だけ過ぎる #短歌
消えないぶんだけ逃げていく熱をあなたの色に預けて帰る #短歌
ピリオドを打てば壊れそうだから僕らは靴底で返事をする #短歌
捨てられないのは容器じゃなくて そこにいたはずの僕のほうだ #短歌
間違える前の未来がまぶしくて僕は消しゴムを遠ざけた #短歌
まださわれないかたちのまわりだけ はじまりふわりふくらんでいる #短歌
なにもない白さをなぞるこの夜に あなたの今日へそっと触れてる #短歌
30分前到着という過剰 待つことのみが目的化して #短歌
2個食べたことを秘密にしてみれば春の机にほこり集まる #短歌
春のあいさつ 必要量を越えてなお 言葉はやさしく漂い続ける #短歌
生まれたての騎士の肩には春の影 詩をめぐらせて風がとおるよ #短歌
言わないで半分にするケーキとかやさしさだけが先に座るよ #短歌
春の枝ひらひらと散りてうつくしく破れし国を憂うごとしも #短歌
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