2月20日金曜日。
三菱UFJ銀行鎌倉支店にて、面白がってはいけない事案であろうが、妙な体験をした。
キャッシュディスペンサー2号機でお金をおろす。お札を財布に収めていると、隣の3号機下にきらっと光るモノが目に入った。目(と頭)が悪い上に老眼なので、おおかた飛蚊症による錯覚だと思ったのだが、腰を落として光るモノに近づくとキャッシュカードらしい。さらにVISAマークがあるのでキャッシュカード兼一般的なカードだった。
既に銀行はシャッターが閉じられている。が、午後5時前ゆえ行員は働いているはずだ。瞬間、そのシャッターを手でばしっばしっと叩いて行員を呼び出そうと考えたのだが、CD機コーナーには他の客もいるゆえ、バツが悪い。
CD機の正面に電話があるので、受話器を持ち上げ呼び出すことにした。
すぐに応答があったので、「あなた、鎌倉のかた? それとも東京?」と訊いたら、「どうされましたか」と。
銀行カードが床に落ちてて今、私が拾いました。
3号機は手許側に台があるため、落とし主には見えないけれど、隣の2号機からそのカードが目に入ったのです。
電話の向こうから「鎌倉外でこの電話をお受けしてます。遠隔操作で回収させてください」と。
で、訊かれるままにカードの番号などを伝え、最後に「カード記載のお名前を読み上げるので正しいかどうか教えてください」などと言われ、「その名前に間違いありません」と回答する。
「では、そのカードを3号機に差し込んでください」
すると、吸い込まれた瞬間、「このCD機は使用できません」という表示が出た。いったん、このCD機内でそのカードは保管されるようだ。そのあと、鎌倉支店の行員が回し、持ち主に連絡するのだろう。
これまでにも何度か落とし物を警察に届け、それが財布の時など(持ち主からの謝礼を受け取りますか)みたいな書類に「必要なし」と書いたこともあった。
銀行でバンクカードを拾う。今日の「初体験」は生涯に一回となるだろうな。
今週はずっと落ち着きのない平日だった。
一昨日の18日、多摩市に住み、私と同じ車種・同じボディカラーのクルマを買っちゃった画家君が鎌倉までその愛車でやって来た。普段から私が馴染んでいる市内のブックオフで待ち合わせたのだが、2台を並べて彼は微妙な相違点(たとえばタイヤ)をチェックしたり、1カ月乗ってみての感想を述べたりで、話がめちゃ弾む。気に入っている様子に安堵した。彼が私と同じクルマを買ってしまったのは、私にも責任の一端がある。遠路岐阜までぼくのクルマを交替交替で運転して、「へえ〜、面白いクルマだな」というインプレッションを持ったわけだが、300キロの試乗なんぞ普通はあり得ない。
画家君は相当にダメな人間なのだけど、そのポンコツ具合が私にひどく似ているのである。読書が好き、洋楽が好き、美しいものが好き。政治や宗教観も私に近い。何よりまだ50歳なのに、人生を半ば降りかかっている。ひょっとしたら彼は20歳の頃から消極的希死念慮があるのかもしれない。私は愚かで滑稽な社会や人間が目に入ると時として転落願望が湧き出したものの、あいにく彼のような繊細さと諦観は持ち合わせていないため、すぐに功利主義的な姿勢を保つことが出来た。良きにつけ悪しきにつけ狡猾だと言える。ちょっと優秀な奴にありがちな世渡り上手、生き上手なのだが、それは私にあって劣等感に繫がっている。自分に対する不信感でもある。
私が彼にできることって何だろう?
励ます、ノーだ。彼を励ますことなど誰も出来ないだろう。
何かふたりで出来ることを協働してやる。これならイエス、かもしれないな。
彼と会った日の夜、カーステレオ用のSDカードを作り直そうと試みた。一度、彼の好きなアーティストの曲をしこたまSDカードに収めて渡した。が、カーステは作成したSDカードのMP3ファイルを認識しない。彼のカーステの取説を隅から隅まで読み、フォーマットはWindows標準のFAT32にしているのに、なぜファイルが認識されない?
ネットであれこれ調べてみる。
ひとつ可能性を見つけた。FAT16というえらく古いフォーマットなら彼のカーステが読み取る可能性もある。が、現行Mac下でFAT16のフォーマットは出来ない。
朝から彼と会っていたので疲労困憊だったが、夜の11時を過ぎた頃、押入でホコリを被っているiMacを取りだした。現行のMacはCD読み取り装置がないのだが、古いiMacならそれは備わっている。SDカードは諦めて、音楽CDを焼いてみよう。
が、2009年製iMacのCD装置は壊れているようで、カラのCD-Rを認識してくれない。
午前2時までいろいろと試してみたのだが、徒労に終わった。
ダメ人間対ダメ人間、マイナス掛けるマイナスはプラスになるはずなんだがなあ。
最後は彼のためにやっているというより、自身の負けず嫌いに火がついた恰好だった。
毎日毎日、小さな失敗がある。悔しい限りだ。
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