月の指 スワイプされる夜の壁 履歴は消去されない仕様 #短歌
絶滅と書かれた棚で瞬きし感情だけが黄色く息づく #短歌
いないひと包みをほどく夜の卓 ぬけがらだけが甘く光った #短歌
失踪は遠くへ行くことじゃなくってここに座ったまま薄くなる #短歌
雨粒を数えきれずに立っている濡れないふりが少し上手に #短歌
踊れない声も切れない夜にいて寿命の章をそっと抱きしめ #短歌
消えた灯をまだ抱いている胸の奥 たましいと呼ぶ距離のあたたかさ #短歌
トーストに影まで溶けて朝になるしんしんとしてるいまのしあわせ #短歌
吹き抜ける風に正される立ち止まる消火器の影 今日を引き締め #短歌
あの夜をまだポケットに入れたまま友のいない道霧だけ増して #短歌
寒波くる夜更けの目覚め湯気の酒 一人の影が白くする窓 #短歌
背のうしろそっと包めばしずむ音 息絶えながら深くなる夜 #短歌
旅先でよすがのように能面を買ってしまった夜がやさしい #短歌
瓦礫にも祈りは落ちて拾われず四つの楽器が空を縫い合う #短歌
既視感は返却期限のない本で頁をめくると今日が出てくる #短歌
地上から見えない線が増えるたび心も空に立ち上がってく #短歌
逆らわず身をゆだねれば水の音 年輪のよう空は高鳴る #短歌
闇ふかく手の記憶だけ濡れ残り川は息して夜を抱きこむ #短歌
目覚めれば別の額で息をする輪になりほどけ朝は始まる #短歌
玄関にコートを掛けて黙ったまま雪は名前を名乗らず帰る #短歌
★
ログインしてコメントを確認・投稿する