ちょっとだけ段差の上で言いかけたやさしさだけがこぼれてしまう #短歌
個包装の綿棒ひとつ取りだして夜をきれいに分けてしまうよ #短歌
聞いているうちに飽きちゃったよ春の雨たしかに最初はやさしかったね #短歌
なんでだよ全部かぼちゃの味になる秋という名の呪いみたいだ #短歌
課金顔 光を弾くアプリ越しわたしもかつて欲しかった顔 #短歌
南極の氷で飲もうと言う人にゆっくり溶ける沈黙を聞く #短歌
愚問ですけど灯りを消したあとの顔思い出すのはなぜなんでしょう #短歌
ひっそりと母音のなかに息を置く 呼ばれぬままの雨を聴いてる #短歌
君だけが正しい顔をして笑う 多様性ってどこから来たの #短歌
説明はあとでいいとつぶやけば真水のような沈黙ひろがる #短歌
石油タンクの陰でねむれる猫ひとつ冬の余白をゆっくり埋む #短歌
放し飼いの犬がわたしを みて笑う 帰る理由をどこかに落とす #短歌
変なこと考えるのをやめたから水のにおいが少しきれいだ #短歌
刺青とレースの影がよりそえば息の深さを測るみたいに #短歌
都内某所 広告ばかり変わるビル 名前を呼べばすぐに遠ざく #短歌
届かない匂ひの層に沈みつつ鍋の底にも名を忘れをり #短歌
紙袋ふくらむほどのぬくもりを機械の声がわたしに返す #短歌
沈黙の器の群れにとまりかけ ひらり らり と午後のほとりは #短歌
文句言えないとなりで歯を磨く泡だけやさしく光って流れ #短歌
リップ塗る角度のことを考えて実戦用の顔つくる朝 #短歌
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