空席が目立ってしまう午後三時 拍手の音がまだ遠すぎる #短歌
生誕祭ハグの絵文字が並んでて抱くも抱かれるも青のままいる #短歌
変化とは体温ひとつずれることまだ知らぬ方へ体傾け #短歌
融雪剤乾く舗道に足を置く星は遠くでまだ凍ってる #短歌
診断の行間にいるわたしたち 正常という檻のほとりに #短歌
盗電を咎める声のその奥に暮らしの音がまだ灯ってる #短歌
鏡には少し笑える自分いて昨日の咎を撫でて消してる #短歌
見上げたら眩しいことを知っていて目をつぶるまで少しだけ待つ #短歌
ホームケーキ掘って食べれば甘さにも重力のある午後がはじまる #短歌
作り置きしないスープのあたたかさ 今日のわたしを今日で終わらす #短歌
弱酸性洗剤の泡ゆれる午後 男の手首に集まる光 #短歌
秋深く 内臓をよける指の先ひとつの正義が皿を曇らむ #短歌
顔だけが見えては消える湯気のなか名前を呼べばまた曇りだす #短歌
まかないをゆっくり食べる夕まぐれ誰にもならぬ手のかたちして #短歌
なのよってまた言いながら無花果を喉で転がす誰でもない声 #短歌
湯気のなか正しさだけが揺れている何もかけない塩のような日 #短歌
私たち奪うほうにも似てきたね 広すぎる道 風ばかり立つ #短歌
夜の窓わたしの顔が少しずつ知らない誰かに似てきて怖い #短歌
指先でふれてしまえば言葉まで燃えてしまうね冬のはじまり #短歌
鳥の巣に似たる夜あり眠りには脱ぎたる日々を抱くことなり #短歌
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