腕時計焼け跡だけが白くある袖の季節をひとりで選ぶ #短歌
愛よりも金かと問えば沈黙の通帳のなかで数字だけ増す #短歌
歌壇から抜かれた苗の根の泥を誰も気にせず靴裏にする #短歌
あとにせよ考へることはその次だ 叩き壊せば音だけ残る #短歌
バランスを崩すことでしか確かめぬ この国の日々支え合いなし #短歌
痛みとは分配可能な貨幣めく 誰もが持ち隠して歩く #短歌
濡れながら濡れていること証明し形のままに街に現る #短歌
ごろ寝しなにかせよとの声がしてひとまず腹を持ちあげてみる #短歌
水たまり空をうつして澄みきって傘の骨だけ静かにひかる #短歌
折り畳むスポーツ紙にも秩序あり朝のホームを灰色に埋む #短歌
とどまって行き場をなくすしずくあり 電線だけがその居場所なる #短歌
夏光にのびた舌さえ影となり黒き路面に深く刻まる #短歌
白き手が屋根より垂れて風をよぶ 雨は去りてもまだ息づいて #短歌
説明もいらぬほどただ雨が降る 床に点在する砂の静けさ #短歌
歩くほど特別だったものごとはただの散歩に置き換わりゆく #短歌
歩くほど特別だったものごとはただの散歩に置き換わりゆく #短歌
給湯器の音はつづいて夜が更け梅の見頃をあてずっぽうに #短歌
コーヒーの湯気にまぎれてあれあれと消したいことが躍りだしてる #短歌
はじまりを置けばおわりはついてくる 水をすくえば波紋ひろがる #短歌
犬がただ振り返るだけそれなのにぼくの心はすこし遅れる #短歌
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