壁越しに知らぬ誰かの恋の種 ふくらむ気配耳にのこりぬ #短歌
甲斐路なる雫ひとすじ垂れおちて招かれながら返せぬ言葉 #短歌
盗み見て少しだけ知る明日さえわたしのものにならないことよ #短歌
夕やけにころがす小さき糞ひとつ哲学よりも重たくみえて #短歌
からあげのあたたかさだけ残されて罪かどうかも忘れる歩み #短歌
まなざしのずれをまといて笑いだすわたしの意味を君は測れず #短歌
夕暮れの窓にひかりが割れおちてわたしの膝に神を抱けり #短歌
夜のなか体温だけがはっきりと答えを持って揺れている今 #短歌
山のやう積まれしシャツにほこり落ち触れれば誰か息をしている #短歌
よい夢の続きはなくてまぶしさに水のアジだけ舌に残れり #短歌
ふらふらと振り回される夜の駅 靴ひもだけがきちんと結ばれ #短歌
拍手よりしずかな呼吸欲しがって無音の朝にコーヒー淹れる #短歌
わたしたち生まれてゆくを待ちながら茹でられつづけ光は透ける #短歌
夢の果てどこかで聞いたやりとりをもう一度だけ繰り返しつつ 短歌
卵味かもしれぬ愛 割れてなお白身のようにひろがってゆく #短歌
壁に揺れ強そうすぎる影絵だけ誰もいないと知っている夜 #短歌
心ごとひとを好きだと思えたらなにもむずかしいことはないのに #短歌
最新の兵器にさわるその猿のやさしい眼差しまるで祈りだ #短歌
百均の棚に並んでるような憂鬱をひとつかごに入れたよ #短歌
とほき南へさ雨季をまつひといるだろうわたしはただの水槽の客 #短歌
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