断るの慣れたしぐさをくり返し指先ひとつ曇りを払う #短歌
避けたものかえって足をすくわれて笑う声だけ風に溶けてく #短歌
通であるふりして歩く靴音にわずかに濁る夜の歩道世 #短歌
鉄棒が昨日よりまた細くなる握る手のひらかすかに震え #短歌
方舟の窓はとざされ見えぬ空 行くあてもなく時は流れる #短歌
おもてです言われたほうに従えば裏は静かにかすれを隠す #短歌
優遇の言葉は遠く響くだけ冷遇の椅子足りなくて並ぶ #短歌
思いやりぞーんと書いてやわらかに誰かの孤独包むようにも #短歌
待ち人は影だけ残し現れずじゃない方だけ鳴らす靴音 #短歌
塗りすぎを笑う声さえ染まりゆく容赦のなさを包むテーブル #短歌
拾うたび手のぬくもりに息をして名もなきものを抱えて帰る #短歌
腕を抜け風のなかへと出ていれば名もない鳥の影になるだろう #短歌
窓越しにこぼれるリズム誰のもの 通りの影も少し揺れおり #短歌
瞳にはたしかな銀河ひそみいて夜を見上げる理由となれり #短歌
まなざしは優しさよりも深くいてとどかぬ場所をそっと撫でゆく #短歌
夕映えの幅を少し奪いしは訪問うたびに灯る同じ階の灯 #短歌
わからないことばの底に触れぬまま慈善という手そっと置きたり #短歌
脱出のあとにひろがる夕ぐれに少し笑って結ぶ靴紐 #短歌
生卵をかけたらきっとおいしいな 朝まで話す食べものの顔 #短歌
鉄の味 風のざわめきまぎれ込み流れていない記憶の血潮 #短歌
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