普通とはなにかと問えば沈黙の食卓に置く冷めたコーヒー #短歌
染み付いた機械油にも負けぬほどわたしは日々を着古してゆく #短歌
口の中転がし続ける小さな嘘 飴玉みたいに味が消えない #短歌
はい大丈夫 声を整え電話して水の中から見られてるよう #短歌
よし普通にしていようと思うたび靴紐だけがきゅっと鳴る午後 #短歌
おとなって秘密を背にし歩くからランドセルよりずっと重たい #短歌
ことさらに鬱陶しさ増す朝の部屋 牛乳パックを片付けもせず #短歌
耳だけで知る夏の終わり ひとつずつ思い出に火をつけてゆく #短歌
教えないしつもんばかり夜ふけてもカップラーメン湯気だけ正直 #短歌
はやい雲 キネマ館ごとゆれていてことしの夏のハジマリみたい #短歌
つがい鳩あるまじきほど鳴きあえば駅前時計は正しいらしい #短歌
派出所の椅子を濡らさず霧ひとつ 垂れより先に夜を占めたり #短歌
ひとくちのやわらかさこそまろやかでわたしの声を裏から撫でる #短歌
怖がりに包丁持ちて米を研ぐ炊けてはおそれ食べては生きる #短歌
期日まで回答はなく紙の上静かに過ぎる声なき日付 #短歌
貼られたシールの数字だけが今 わたしの時間すり抜けてゆく #短歌
カーテンの隙間の夕日赤すぎて好きだと吐けば破れそうだよ #短歌
それはただ眩しい時のまばたきかきみのことばを疑っている #短歌
午後三時気後れの色はうふあかくローズヒップを口にふくんだ #短歌
黒い傘折りたたみだといい足してそれでもまだね伝わらぬこと #短歌
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