夕立のあとでだけ出せる声があり 桃の皮むきながら思い出す #短歌
わたしから逃げるようにも見えたのよ あのスーツケースと揺れるあなた #短歌
なにがどうよかったのかは言わぬまま本能寺だけきみと燃えてる #短歌
恋とはたぶん 湯呑とラッピング袋の間で迷う時間のこと #短歌
終わるたびに女は少し重くなる 背中に残る冬の輪郭 #短歌
たぶんまだ愛していると汗が言う 赤い光の下で立ちどまる #短歌
泣くほうがまだましだった 麒麟さえ背を向ける夜のわたしの声は #短歌
きみがいた場所の水がまだ甘いまま なぜかだれにも知られていない #短歌
ほころびにあつめているの蝉しぐれ おいのりなんてしてないけれど #短歌
交通系ICに記憶を吸われながら一艘のバスが黙って着く午後 #短歌
七月の鳥だったのね あの時の泣き顔さえも風にみえてた #短歌
触れないで窓のむこうのあの視線 今さら愛にされては困る #短歌
咲きながらいちばん暗いほうを向くシクラメンには触れないでいて #短歌
ナース靴ひかる廊下にこだまする 他人の痛みにだけやさしくて #短歌
白さなど似合わなかった剥がすたびやっと見えてきた生きたところが #短歌
あなたには訊かれなかった願いごと サービスエリアに置いてきた星 #短歌
夜ってチョコみたいだった 朝になりとけてきみのとなりに空がいた #短歌
透明人間ていう設定だったから「好き」って書いてもバレなかったよ #短歌
敦盛を検索してた 死にたいわけじゃなくただこの夜の配役がほしくて #短歌
はじめてのキスだったのに鉄の味 たぶんどこかでなにがが壊れた #短歌
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