あなたのあとに花でも草でも咲いてよくてそれをだれも抜かなければいい #短歌
旅のまえの夜がいちばん遠くてだれにも触れずるるぶを閉じた #短歌
口から口へわたるぬるさにだけちゃんと明日がついていた気がした #短歌
海を知らないままでいい そう思って犬に触れたら波がきていた #短歌
つくりすぎた菓子をそっとまいてみる 土のにおいだけが返ってきた #短歌
夕食の皿のうえでただ冷えていた マグロだったことはもう誰も言わない #短歌
ひとりきりの台所にいてこおりの熱さを知ってからやさしくなる #短歌
ひきだしの奥で曲がったままのスプーンみたいに たぶんまだ愛だった #短歌
誰も信じていない占いだけが今朝もきれいにたたまれていた #短歌
見られたことをまだ思い出している 本当は手なんか振らなきゃよかった #短歌
ひと駅ぶんの白さを歩いてわたしの境界はぼやけていった #短歌
甘いものをくりかえし飲めることがとてもやさしい選択に見えた #短歌
ただ座っているだけの人の背中がときどき水鳥みたいに揺れてた #短歌
たぶん昨日の焼肉だけど念のため靴下のほうにも近づける鼻 #短歌
好きだった理由が全部消えていて椅子にお尻が吸い込まれて #短歌
たぶん午後 麦茶じゃないと断定し 他人の本性つい読み解く癖 #短歌
プリンの表面がひとつだけ波打ってなにかを言いかけているようだった #短歌
石を投げたひとのほうが先に忘れて長く跳ねた水だけがわたしを見てた #短歌
火はおぼえている からだのうらにある だれかが書いた夏の字の熱 #短歌
好意だけ詰めたつもりの春巻がなぜか君には毒の味する #短歌
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