読めなかった詩のページをちぎっては水に浮かべる誰にも見えず #短歌
見えない形をなぞることだけが今朝のからだに許されたこと #短歌
何も来ない方角に背を向けて腕を折りたたむくせが治らない #短歌
牛乳を買う 図書館に寄ってみる そのまま歌になっていく日々 #短歌
まちがえて誰かの風になっていた うぶげあるまま歩いてしまう #短歌
知らない番号にはやく出たあと水を飲む音だけ小さく聞こえた #短歌
街灯の揺れる裏路地 停電の夜のコンビニ青く息づく #短歌
行ってしまった足音が砂利をもとに戻さず朝になるだけ #短歌
朝焼けに輸入レモンの香漂う 路地の市場の旅の始まり #短歌
もうひとつの季節がしまってあった 修正液のにおいがしている #短歌
知らんかった土地の湿度がレジ袋の1番底に残っていたの #短歌
渋谷にはなんの用事もないけれど光だらけで死ねそうにない #短歌
どこにも帰らない服のすそだけうすく光ってホームに残ってた #短歌
白い靴汚れることに賛成し毎日ひとつずつ名前をつける #短歌
たよりない泡がカップのふちにいてなにも言わずにやりすごす朝 #短歌
転送を終えた画面に風が吹く ここじゃない国でここじゃない声で #短歌
ひとが去り照明だけがひらいてるだれにも似ない曲のあとの部屋 #短歌
照明が切れて リンゴがそこにある もう誰の役でもなくなっていた #短歌
潰されたイチゴの中に夏がいて先割れスプーンが秘密を刺した #短歌
やさしさに間に合わなかった午後三時 もうだめかもね 雨がやまない #短歌
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