晩酌に混ぜた薬と気づかずにひと息で旅立つ夜の静寂 #短歌
香り無き毒を抱きしめている夜 死なない事に意味などなくて #短歌
日向ぼっこ たたずむ椅子の影ひとつ 誰も 寄り添わぬ老いの午後 #短歌
祖母のような他人が消えてゆく 手のひらから零れた時のように #短歌
赤ずきん 血のにおいしてただいまと言えば返事のないベッドだけ #短歌
間違いと知ってた道を選んだの 誰にも背中見せなくなかった #短歌
ぺらぺらと紙のようなあたしでも溶ける真似だけうまくできるの #短歌
忘れてた 白いご飯の温もりも海苔だけ噛んで夜をつぶした #短歌
Yシャツの白さばかりが目について君の不器用世界にすれてく #短歌
天気くらい良くあれと思ったのに最後の空に傘がいらない #短歌
記憶とはやわらかすぎる目覚ましで君の名前を思い出せない #短歌
まばたきの隙に売れてた わたしだけ置いてきぼりのまま笑ってた #短歌
溶けてゆくのは熱じゃなく記憶です 君を保存する冷蔵庫鳴る #短歌
「正しさ」が全部を鈍らせいくね 呼吸がずっと浅く苦しい #短歌
恋ならばもっと丁寧に死にたいの 弾けた音をまだ飲み込めない #短歌
おりんの音にだけ揺れる窓がある そこから他人になる音がした #短歌
日曜日には光が来ると決めていた 君を含めて誰もいなかった #短歌
窓の外 手だけが風を知っていた そのまま下ろす 鉄のまぶたを #短歌
月が見えた 知らない種類の音がして 靴のままでも歩ける気がした #短歌
会えないことがまた花になる街で荷台の揺れに水音がする #短歌
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