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2020年08月22日19:34

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生まれて初めて、辞書の校正ミスを発見

 昨日のことだ。
 生まれて初めて、辞書で誤字を見つけた。それも漢和辞典としてはこれまでに最も売れ、世評の高い『新字源』である。私が持っているのは2011年12月刊の「改訂版四九版」なのだが、その950ページに問題の校正ミスがあった。
 詩人の草稿を朝からずっと読んでいて、ちょうど昼にかかるところだった。
 呻吟しながら、かような箇所に差し掛かった。

  ★    ★    ★
 この晩は実によく晴れてゐて星がすごく見えた。オリオンの一つ一つにしても、シリウスにしても、実に剛大に視えた。ことにアルタールは豪宕大牢。
(編者註 豪宕=ごうとう、気性が強い、大牢=たいろう、最高のごちそう)
 この山奧の夜の西空に懸つて、星と云ふものはこんなにでかくすごく身を過するまでに嚝大に輝くものかと驚いた。
 オリオンは山に沈まうとして怪玄無比の形をして、天の雄(ルビをす)なることをあきらかにする。
 カベラもよくひかる。エエガも大きい。アルデバランも風にもまれてその恍惚たる赤は敦(ルビあつ)く敦くオリオンと傾蓋相傾けてゐる。
(編者註 傾蓋=けいがい、偶然に出遭うこと) 
  ★    ★    ★

「豪□大牢」で引っかかり、詩人の書いた肉筆がどうしても読めない。そこで「豪」という漢字を調べた。
 ああ、これだな、豪宕(ごうとう)。
 豪宕とは豪放と同じ意味で、『新字源』には以下の説明がある。
<気象が強くおおまかで、小さい事にこだわらない>
 うーん、気象? と思ったあと、気性の間違いだと気づいた。
 鬼の首でも取ったような、というと得意げを表す最上級の言い回しだが、それとはちょっと違う。
 辞書を使い始めて55年以上が経ち、この歳になって初体験が出来た、ということにしみじとした感慨を覚えたのだった。
 小学校の3年生くらいで初めて国語辞典(小学館)を買ってもらい、それからは夜眠る前によく辞書を開いては読んでいた。もちろん、知らない字が出てくるたび、毎日のように引いていた。
 漢和辞典は高校になってから買ったのだろうと思う。『新字源』だった。
 国語辞典は高校生の分際で『広辞苑』に変わっていた。
 それから回りまわって、まるで子ども時代に還ったように毎日、10回くらいは『新字源』を開いて調べものをしている。半世紀が過ぎた、というのがまるで邯鄲の夢みたい。

 今日22日日曜日。午後2時を過ぎたところでギブアップ。
 で、家から4キロ弱のブックオフへ涼みに行ったところ、辞書の棚に『漢辞海』という漢和辞典を見つけ、手に取ってみたらまだ書店用の短冊(スリップ)が入った新品同様で、万引き商品かとも思ったのだが、奥付を見たら2000年刊だったのでその心配は薄い。で、中味を見てみたら、『新字源』より字が大きくて見やすい上に、中国や日本の出典例が数多いし、書き順や成り立ちなども載っている。これは似て非なるものだな、買ってもいいか(いいです、どうぞご自由に!)と思い、レジに持って行った。かなり嬉しい。日本で初めて一般国民向けに出した国語辞典は『言海』だが、『漢辞海』は言海の大槻さんに敬意を払って「海」を入れたのだろうか。
 うちに帰って、監修者の前書きを読んだり、付録の「漢字について」などを読んでいると、あっという間に1時間が経っていた。
 試しにいくつかの漢字を引いてみたら、使い勝手のいい辞書であることもわかった。
 ちなみに、「豪宕」については、
<男気があって小事にこだわらない(新唐・杜伏威伝)>とあった。男気とはまた古風な、というか、こんにちにあっては女性差別的な説明だぞ(苦笑)。
 
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