朝刊というのは、前日に起きた事件や政治の動きなどの記録簿で、読みたい記事がきわめて乏しい。が、夕刊は各社それぞれ、定期購読者の知的欲求を最大の因子にした内容で、個性が出る。先月末、間違って日経新聞の夕刊が届いた。私は朝日新聞の購読者ゆえ、誤配である。日経に慣れていないこともあって新鮮ではあったが、正直なところつまらなかった。
夕刊は薄っぺらい。今日だと全12面だ。が、読む記事や連載エッセイが多く、毎日30分くらい費やしてしまう。
1 「普天間小学校に落下物 米軍機から 児童に石当たる」
北朝鮮のミサイルより米軍関係のほうがリスク係数は高いはずだ。オスプレイ然り、しょっちゅう湘南上空を飛んでいる大型ヘリコプター然り。
2 「ゼネコン4社情報交換 リニア工事 清水・大成側も聴取」
リニアの駅工事で大手ゼネコン4社の担当者が日常的に情報交換、という記事で、なんか聞き飽きた。談合なくして公共事業なしだろう。加計学園獣医学部の建設工事なども含め、政界と癒着している企業が儲かる仕組み。
3 連載ルポ「英語をたどって�検�
幕末、利尻島に上陸したラナルド・マクドナルドを描いた吉村昭(『海の祭礼』)の話。吉村は何度か島を訪ね、利尻島の教育委員会に電話をして「マクドナルドが途中で見た花は何か?」などと訊ねたそうだ。吉村が書く小説は、ルポよりもルポらしいのだが、文学的想像力と細かな取材の賜物なのだろう。すごい文学者だ。
4 「回顧2017 論壇 揺らぐ自由と民主論考に注目」
権威主義が日本をはじめ世界に猛威を奮った1年だった。まさか民主主義の価値が否定される世の中になるとは。
「権威主義とは一般に、上からの権威に服従させる(する)考え方とされる。権威主義的な政治体制は、自由や民主とは相いれない。(中略)
政権に忠実h人物を司法や行政機関に配置し、様々な便宜をはかってメディアを取り込む。(後略)」
5 連載エッセイ「思考のプリズム」酒井啓子の巻
酒井さんの論考には毎回、教えられることが多い。
今回は、難民問題とトランプの「イスラエルの首都はエルサレムだ」発言による中東情勢の緊張問題が主テーマ。最後の段落で国連職員の活動を紹介していたのだが、ひどく感動してしまった。
「先月、レバノンで、国連難民高等弁務官事務所を訪ねた。かつて緒方貞子さんが弁務官を務めた組織だ。現地の担当者は、1万8千人以上のイラク難民全員を、何回も訪問する。シリア難民は数が多すぎて全員は無理だけどねと言うが、難民が道で警察に逮捕されるたび、説明し引き取りに行く」
6 黒木瞳連載コラム第187回
憧れのアイスランドへ(ロケ)で訪ねた話。旅先の宿で早く目覚めてしまい、スティーブ・ジョブズの生涯を描いた漫画(ヤマザキマリ著)を読んだそうだ。
で、コラムの〆に驚いた。
「今まで、また来るだろうなと思ってその国の空港をあとにしたところは、再訪することが多い。知らなかったことを知る喜びは、加齢とともに増している。どんどん純粋になっているということか……」
この人、すごい人間力だ。
7 「南京事件80年 子ども世代が集会 母の傷、父の吐露、語り継ぐ」
一昨日、私は慰安婦問題のヤフーニュースで、怒りのコメントを書いた。上から50本ほどコメントを読んでみたら、すべてのコメントが下劣な中傷か嘲笑で、慰安婦問題を真剣に受け止める人はゼロ人だった。
南京事件、私は「南京大虐殺」と習ったが、事件が風化するのは仕方ないにしても、そんな事件はなかったという論が広がり、ないと信じる国民が増えている流れに唖然としている。
今年の初め、清水潔の『南京事件を調査せよ』という渾身のルポを読んだ。誠実に証拠集めをする著者の姿勢に、終始胸を打たれた。虐殺があったかなかったかは言うまでもないんだけどね。
集会では、日本兵に強姦された中国人女性の子どもや、中国戦で児童を殺した日本兵の子どもが出席したそうだ。
8 「今日 水曜日の手紙をあなたへ」
週の真ん中の水曜日に、今日の出来事を手紙にしたためて、ある郵便局へ送ってみませんか。すると、別の誰かが記した水曜日の物語があなたに届くんです。
まるで、SFファンタジーのような話だ。
手紙は宮城県の小さな島が送り先。そこにはポストが用意されている。
https://samegaura-wed-post.jp/
こういう記事があるから、夕刊は面白い。
この記事をメモっておきたくて、今日は夕刊をテーマに日記を書いてみた。
他にも感動した記事があった。
折り鶴を首に巻こうとしているサーロー節子さんの写真だ。彼女の笑顔をしばしの間、見ていると、彼女の声が聞こえた気がした。
ノーベル平和賞で初めてサーローさんを知ったのだが、彼女に対する自分の慈しむ思いは、項を改めて書きたい。この秋と冬で、唯一嬉しく思えたニュースがサーローさんだった。
P.S
夕方5時、「日刊ゲンダイ」を買いにコンビニへ行った。
1年半にわたって関わって来た著者が同紙でインタビューを受け、掲載が本日とのことなので、やむなく寒風吹きすさぶ中、行ったのだった。
掲載記事を読んでから、念のためスキャンしておいた。
本が売れるといいな。
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