朝、パジャマを着替える時、その日の予定にある程度合わせて服を選ぶものだ。家の近所くらいしか出ない日、電車に乗って出かける日。誰かと会う約束があるならそれはどのようなシチュエーションでどんな人なのか。車に乗る日、自転車に乗る日……。
ラズリに朝メシを与えたあと、クローゼットの前で少しの時間悩んで選んだシャツは紺色のラルフローレンだった。かれこれ10年くらいハンガーにかかっているのではないか。小泉が同じタイプの鮮やかブルーのそれを着てブッシュの前でジェスチャー付きのプレスリーを演じた。別にググっても仕方ないことだが、小泉のプレスリー醜態より2年くらい前に買って着ていたものだ。
古着感はあるものの、手洗いで生地を傷めないようにしているので、ボロには見えないだろう。上京して知人を見舞う、ということはこの時点で決まった。
着替えてすぐにラズリと散歩へ。滑川の水量が普段より多い。夷堂橋あたりは普段ならハゼの子どもたちが群れているのだが、今日はまったく魚影が見えなかった。
お節介になったとしてもそれがどうした、という思考法で今日一日はいよう。
午前11時半。駅の周辺は都心ターミナル駅より人口密度が高いくらい混雑していた。これほど観光客をないがしろにしている駅は、日本中を探し回ってもあるまい。申し訳程度の観光協会があるにはあるが目に付かないし、待ち合わせるスペースは畳一枚もない。これで世界遺産登録をしようと考えた役所と文化人の無脳ぶりが、今さらながら顕わになる。待ち合わせ客たちを手で払い除けないと改札口を通れない駅(の構造)っておかしくないか。廃棄処分出来ない核燃料を抱えながら原発を稼働させてきたシステムと同じくらい、人間に優しくないシステムだ。
東京郊外まで1時間半くらい電車に乗って、午後1時過ぎ、某駅を降りた。
……少し安堵した。
このままの流れで死んでしまうのではないか、と不吉なことばっか想っていた。
往きと違って帰りの電車は晴れ晴れした気分で、短編小説集を読めた。途中で10分くらい眠ってしまう。本を読みながら眠る気持ちよさよ。
まだ解決したわけではないが、それでもほっとしたのだった。
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