マン・レイ展もTHE北斎もマイミクさんからチケットをいただく。いろいろ見たい欲張りだから本当助かります。ありがとうです。
先日ミッドタウンで「北斎づくし」を見てきたばかり。そこでは《富嶽三十六景》も46点全部並んでいたのだから、今更…と思ったらそうじゃない。北斎版画の魅力をポイントごとに紹介、摺の違いも百聞は一見にしかず。
さらに、北斎を冠した美術館だもの、他じゃ見られない展示がある。錦絵の版木を再利用した火鉢は希少も希少。100年間も行方不明だった肉筆絵巻物も美しくてうっとり。前期後期の入れ替えがあるから、機会があれば後期も訪れたい。コロナ禍以降、両国の街は静か。美術館ももちろん空いています。予約不要。
https://hokusai-museum.jp/modules/Exhibition/exhibitions/view/1863
≪極上の北斎、揃えました。≫
すみだ北斎美術館が所蔵する二大名品「冨嶽三十六景」シリーズと、当館開館記念展で約100年ぶりの再発見として話題となった幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」を中心に、人気の高い北斎作品約100点を前期・後期にわけ展観します。今回はじめて「冨嶽三十六景 山下白雨」のバージョン違いを並べて展示、また北斎の錦絵「桜に鷹」等の版木を使用した火鉢を初公開するなど、見どころの多い展覧会です。北斎の名作の数々を通して、日本の四季の美しさ、江戸時代より観光スポットとして知られる隅田川周辺の名所を紹介しながら、北斎のたぐい稀な筆力と発想力をご堪能いただきます。
第1章 富嶽三十六景のすべて
1空間を構成する
《御厩川岸より両国橋夕陽見》
北斎は何と言っても構図の神様。西洋画の遠近法をうまく取り入れていながら浮世絵独自の思い切った構図。手前の船は思い切り大きく描き、輪郭線くっきり、奥のものは彩度落として輪郭線なし。これで遠近バッチリなのに、私たちは船頭の頭越しに遠くの富士に嫌がうえにも目が行く。目線、仕向けられています。普通ならそこで終わりだが、船に乗合の鳥刺しの竿が一本すっとうえに伸びている心憎さ。
2○×△で作られた世界
富士山は△、その△と対比させたり重ねたり、北斎の構図はその洒落っ気がすごい。「北斎づくし」展で紹介されていた「略画早指南」、定規とぶんまわし(コンパス)で○×△、まるでキュビズム。ものの形を大きく捉えるは、美術の授業でやった石膏デッサンの基本。
《青山円座松》
この尖った△の富士山と丸みを帯びた△の龍岩寺の松のばかりに気を取られていたが、左端松の下に人の足がみえる、松葉掻きをしているのに気づかなかった。遊び心に脱帽。
3驚異の自然
《山下白雨》
浮世絵版画の初摺は大体200枚と言われている。初摺は絵師も立ち会うことが多いので、絵師の意向が最も反映されている。人気の図柄はその後版を重ねるが、磨滅してくるのでシャープさに欠ける。また、人気に胡座をかいて工程をこそっと省略しちゃったりするので、グラデーションがイマイチのものや色が変!って言うものも出てくる。
…という知識はあるものの、実際、こんなメジャーな浮世絵で、初摺と後摺を比べられるのが面白い。
初摺
後摺
イナヅマのシャープさ、富士山の輪郭、全然違う。
さらには、こんなバージョンも!
「蛇足」とはまさにこのこと、版元と堀師、摺師が勝手にやってみたはいいけれど、完全にスベッた!北斎に知れたら大目玉?消費者の反応は?…いろいろ想像は尽きない。
4形のないものを捉える
「北斎づくし」展でみた読み本では、現代劇画の元祖となったような激しい人の動きや風や光、地響きなど衝撃の描き方が画期的だった。
《駿州江尻》
この絵は風の線が一本も描かれていないけれど、突風がどのくらいの強さでどこからどう吹いているかがわかる。
《礫川雪の且》
「且」は「旦」の間違いで、朝(あした)という意味。誤植だったのか、なぜ且?と思っていたのですっきりした。
初摺には指さす空に鳥が3羽飛んでいる。後摺にはこれが消えている。
鳥があるとないとでは、夜中降り積もった雪の朝の空の広さ、高さ、さらには凛とした朝の冷たい空気感が違う。後摺↓
5イリュージョンを仕掛ける
《甲州三坂水面》
どこが不自然か、わかりますか?実際の山はゴツゴツした岩肌見える夏の富士山なのに、水面に写った富士は冠雪。季節を跨いで1枚の絵。「北斎漫画」13篇に逆さ富士として掲載あり。
6超絶表現
絵師、彫師、摺師の三位一体の技。こんなに手の込んだもの、当時いくらで売ったか知らないが採算取れたのかしら、と余計なお世話を思う。堀師、摺師の意地・矜恃、絵師から「どうだ。できるかい?」と難しい絵柄出されて、ますます燃える?
《本所立川》
こまかい、細い!彫刻刀があっ!と滑ったら大変。木材置き場入り口に書かれた文字は、次回出版の予告だそうで、抜かりないなぁ。
《東海道品川御殿山ノ不二》
画像だと分かりづらいですが。薄い紅のぼかしに空摺(エンボス加工)の小さな丸い点で無数の桜の花びらを表現。桜の花は繊細です。
《東海道金谷ノ不二》
大井川の川渡し人足と客…描かれている人は何と120人。それぞれに表情がある。
第2章 橋と滝の絶景
1不思議な橋の構図
「諸国名橋奇覧」から前後期合わせて12点
《足利行道山くものかけはし》
本堂と茶室を結ぶ橋。現在も観光スポットらしい。雲たなびく様子がいかにも仙境
《摂州天満橋》
天神祭の提灯に灯りが灯る。宵の風景が美しい。
《すほうの国きんたいはし》
斜めの線は俄雨。
後摺にはない。↓
2水の形を捉える
「諸国瀧廻り」より前後期合わせて8点。北斎は水の表現を色々と研究、描き分けていたことでも有名、滝は絶好のサンプル
《木曽路ノ奥阿弥陀蛾ヶ瀧》
これはちょっと珍しい。
落下する滝の流れは正面から、その滝口を真上から描いている。キュビズムか!滝を愛でながらピクニックは楽しそう。
第3章 花と鳥、虫たちの楽園
いよいよ初公開の《葛飾北斎「桜に鷹」ほか四面版木火鉢》
浮世絵の版木を四面に貼り付けて飾りとした火鉢、いわば木材再利用のリサイクル火鉢なのだが、これは素敵!版木と説明されなかったら、火鉢の装飾としてレリーフを施したのだと思うだろう。大店のご主人がこの火鉢にあたりながら大福帳に書き物を…の様子が思い浮ぶ。
そもそも版木自体が残っているのは珍しいと言う。なぜなら木材は大事な資源、硬い桜の木は出版し終わったら、次の図の版木となるために削って使う、江戸時代はなんでもとことん再利用。
ましてこれは、輪郭線を彫る「主版」(版木には、主版と色面を摺る色版がある。)、錦絵の主版の版木が残っているのは他にボストン美術館にあるだけらしい。それだけ希少。
一面は北斎の「桜に鷹」、その裏は「詩歌写真鏡 春道のうらきの」の下部2/3、短辺の面は渓斎英泉の錦絵と漢詩が書いてある山水画(作者不明、現在捜索中)。
第4章 幻の絵巻 隅田川両岸景色図鑑
1 隅田川の名所
2 幻の絵巻 隅田川両岸景色図鑑
フランスで浮世絵の販売を一手に担っていた林忠正がフランスを撤退する時1902〜1903年に競売にかけて以来、100年間行方不明になっていたという。
両国橋付近から新吉原へ向かう隅田川両岸の風景と、新吉原での遊興の様子が描かれた、全長7mの北斎肉筆の絵巻。
再び世に出たのは、2008年のロンドンオークション。墨田区が買い取り、現在すみだ北斎美術館所蔵、面目躍如。
注文主は、戯作者烏亭焉馬。絵巻物には彼の狂文もある。焉馬は北斎と仲が良かったそうで、北斎のことを「信友」と記している。親友ではなく、信友か…いいなぁ。
絵巻物、北斎肉筆部分で639.9�僂發△襪里世�らいっぺんに展示できず、前期は両国橋から木母寺まで、後期は日本堤から吉原大門までと吉原室内に分けて展示。吉原遊興の華やかな絵が見られなかったのは残念だが、両国橋から乗船しての隅田川散歩は臨場感あって気持ち良い。
まるで水彩画のような美しい色調。水面に映る橋や船の影は薄墨で輪郭線描かずにぼんやり霞んで、西洋画よりもリアル。
やまと絵を思わせる霞や雲の向こうに見える寺社の赤い屋根や緑の木立は別世界のように清々しく、小さく見える人のシルエットでも行いが手に取るようわかる…上手いなぁ。絵巻というだけあって、左から右へと景色と物語が流れるように進む。これは眼福。
機会があれば後期もまたきたい。
9月26日まで(8月24日より後期展示)
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