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2026年10月06日18:00

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良心の呵責について

 10月6日火曜日、晴れ。
 先週の金曜日、うちから徒歩10分弱にある横須賀野菜の無人販売所前を通りかかった。
 その家の息子が横須賀で畑を借りて農業を営まれている。で、大半は農協と道の駅におろしているのだが、規格外の野菜や道の駅販売での売れ残りを格安で売り出しているということだ。
 たまに私と同年輩のおばさん(息子の母)と会話を交わす関係で、ほぼ有機農業ほぼ無農薬の野菜を安価で食べられるのがありがたい。年に2回、葉山牛の牛糞を買うそうだが、「2万5千円もするのでいやになっちゃうよ」などとおばさんは時々ぼやいている。
 で、金曜日の夕方、その無料販売所で、野菜とは別の箱のなかに不思議な電化製品が入れられていた。それはWi-Fiの無線親機から発信される電波を受信して増幅させる「中継器」と呼ばれるもので、大きな家(とりわけ2階建て3階建て)で通常は使用される。我が家が大邸宅かどうかは別として、2階と1階それぞれに自分の部屋を有しているので、以前から中継器を試してみたいと思っていた。光回線の速度は親機がある2階だと200Mbpsだが、階下の自室では20Mbps程度に落ちる。さらに、iPhoneなどで調べても電波そのものが弱くなっている。が、20Mbps程度あれば、YouTubeもアマプラの映画も観られると言えば観られる。しかし、Tverや楽天TVではたまに1秒くらい固まることもある。
 中継器ねえ、と思いつつ、不要な物は買いたくない。
 その中継器が「持って行ってください、無料です」と書かれた段ボール箱に、新品に見える箱付きで置いていたのだった。
 私は得することが好きではあるが、それは小さな得、例えばそれと知らずに訪ねたドラッグストアで「本日、会員様限定全品10パーセント引き」という程度の得だと好ましい。が、試してみたいと長年思い続けていた中継器がただ、というのは、なんとなく気が咎めた。
 その時はあいにく葉物野菜が売り切れていた。が、お金を入れる箱は棚にあった。
 500円玉を入れていただいていこう、とも思ったのだが、無料という誘惑に抗しがたく、そのまま持ち去ったのだった。今度、野菜がたくさん並んでいたら買えるだけ買おう、みたいな言い訳をして。
 で、その夜、早速、それぞれのパスワードを打ち込んだり電波の状況を確認したりしながら中継器と親機を無線で繋いだ。
 と、親機から飛んでいた弱い電波は強くなり、速度は2階1階ともほぼ変わらない。これほど中継器ってスグレ物なのか。
 が、しかし、どうも心が優れない。こういう泥棒のような真似事でスグレ物をゲットするとはけしからん、と咎めるのである。1階でiMacやタブレットを使うたび、気分いいなあ、という気持ちと「こそ泥め!」という暗い気持ちが交叉する。
 で、日曜日、月曜日と野菜直販所を訪ねた。しかしながら、おばさんとは会えず。
 そして今日、3度目の正直で行ってみたら、運よくおばさんがサツマイモを棚に並べていた。
 事情を話した。ごめん、と謝りつつ、感謝の気持ちを伝えた。
 その家は鉄骨構造だか鉄筋だかで中継器を買ったもののまったく中継してくれず、やむなくそれなら誰かに使ってもらおう、ということだった。なので、思ったとおり完全な新品で、しかもうちで使ってきたWi-Fi親機と中継器は同じメーカー(バッファロー)だったので、シームレスな快適さ。
 おばさんは逆に顔見知りの私が持って行ったことを喜んでくれた。
 葉物野菜があったらたくさん買おう。
 これでいいのかな。
 小学校2〜3年生の頃、「舌切り雀」の童話を読んだ。大きなつづみ、小さなつづみ、の話。私はADHDのせいなのか、小さな頃に学んだ善悪の道徳が骨身に染み付いていて、いまだにその道徳律を守らないと痛い目にあう、という小心なところがある。
 世の中というのは基本、綺麗事でできているが、これを信じ過ぎると落ちこぼれていく。自分が生まれ育った60年代あたりはそれでもある程度優秀であれば落ちこぼれることなくらくらくと生きられた。
 話題にのぼる政治家とか犯罪とかSNSとかを遠目で見てると、幼少の頃に学んだルールや教えはいったいなんだったのか、などとしばしばふて腐れてしまう。敗戦の8月15日を境に世の趨勢が一変したのと同じくらい、私が親とか本とか教師から学んだ教えが通用しなくなってしまったのだった。
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