完成を拒んで生きるということが人間という文体なのだ #短歌
考えてばかりいたから遅れたよ 森はとっくに朝でしたよね #短歌
愛情はときどき花の形より触れた指先だけを覚える #短歌
人間をいったん比喩に戻したら森は静かに拍手していた #短歌
それならば木陰をつくる約目です 僕が僕でいる その代わりに #短歌
やかん湯気のぼる台所に戻れはいつもの朝がちゃんと始まる #短歌
注釈の外へ飛び立つ脚注から世界はようやく本文になる #短歌
シーツの皺の数だけ忘れてく わたしのおもさ 夜のしずくよ #短歌
「違う似たやつ」こそが人生 売り切れてた夏の夜のキレートレモン #短歌
毛布にはまるい寝息が増えただけ 恋ってこんな生活だった #短歌
運命を信じるほどじゃないけれど「おい」で来るなら十分だった #短歌
麦わらの影を追いかけ走った日 なくしたものはあとから光る #短歌
ポケットに入る未来を信じてた ジュースの蓋を集めていたね #短歌
放課後のブランコだけが知っている空の青さの使い道とか #短歌
何もないことを資産と呼ぶならばぼくらはずっと富裕層だった #短歌
それでもね「おかえり」だけは重力でちゃんと私を地面へ戻す #短歌
夕暮れの風船だけが知っている 帰れる空の高さと匂い #短歌
宇宙服なんて持ってないぼくらでもため息だけは真空へ行く #短歌
砂浜に裸足の跡を並べれば明日はなくても今日がうれしい #短歌
貝がらの内側だけが知っているやわらかな波の生まれた時刻 #短歌
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