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2026年08月23日13:18

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古い知人と会って話が弾む

 8月22日土曜日
 同じ大学、同じ出版社で同期入社(共に中途採用)、同じ鎌倉市内在住者という男がいる。彼から先々週、珍しくメッセージが届いて「話をしたい」という誘いだったので、私が週1で通っている駅前のエクセルシオールを指定して会うことになった。この15年間で3回目。在職中はまったく親しい関係でもなかった。
 入社したとき、彼は私を知っていたと言う。同じ大学といっても、中規模大学でそこそこ人数も多いし学部だって違う。だからみんなが知り合い、というワケではない。
 一般教養の講義室に私が乱入してきて、教壇の前で5分か10分、大学の学生部を糾弾する演説をぶったらしいのだ。学生運動はとっくに衰退している時代にもかかわらず、学内には5パーセントくらいのならず者学生たち我が物顔でいきいきと活動していて、構内は立て看がずらっと並び、校門前に機動隊が待機していることがままあった。私は活動家などと勇ましい学生ではなく、水俣病などの公害や被差別部落差別、在日韓国・朝鮮人差別に公憤を覚える純情少年で、ときどき集会やデモに参加する穏健派の学生だった。
 しかし、それから7年か8年が経った入社時に私の顏を覚えていた、というのは記憶力がすごくいいのだろう。
 個人的な昔話に花が咲いた。
 私が大学は5年で卒業した、と言うと、彼も同じ留年組だった。
 あまり言いたくない事情だが俺は1年時仮面浪人だった、と告白したら、なんと彼も私と同様、仮面浪人だった。
 近況報告を交わすうち、どうしたって病気と健康の話になる。
 俺は〇〇病で3カ月に一度定期健診と薬の処方を受けている、と話したら、彼も私と同じ病気で通院し、さらに「4年くらい前から緑内障がみつかり、検眼と眼薬のために通っている」と言ったら、なんと彼もまったく同じで、通っている駅前の眼科まで同じだった。
 これまで彼と親しい話をしなかったのは、ある種、互いに偏見があったからだろう。
 在職中、彼はあまり仕事ができるタイプではなく、その上、結構な女遊び人で、馬鹿みたいな噂を耳にすることが多かった。
 彼は彼で、私は学生時代も会社員時代も尖っていたため、きっと苦手なタイプだっただろう。学力や経歴は似たようなものでも、人間性が両極端だと、反発し合うものだ。
 ここに来て、これほどに境遇が同じなのに、彼は自由闊達さが更に増して生き生きしている。他方の私と言えば、人生はどうあるべきか、とか、自分の在り方がいまだよくわからない、とか、という深い悩みがいよいよ嵩じて、いつ死んだってかまわないというデスペレートな気分に支配されている。生きていることに倦んでいる。
 彼が実はこんな漫画を描いている。と言って、カバンのなかから紙の束を出してきた。
 そこには、萌え系の美形ギャルと、60歳くらいのセレブっぽいジジイが絡む漫画が印刷されていた。しっかりキャラは立っていて、しかも正確無比な背景が描きこまれている。
 AIが組み込まれた漫画制作アプリと、ChatGPT他、いくつものAIを駆使して、ストーリーも作画もAIに依拠する最先端の作品だった。
 Amazonで売り始めたんだけど、どうやって広報と販売に繋げていけばいいのか、私に相談したい、と彼は言う。
 それこそAIに訊けよ。私は最もそっち系では能なしだ。 
 そもそも彼はFacebookにインスタにXに、私が知らないSNSにと、個人発信もしている、mixiだけの私とは大違い。
 彼の(というよりAIの)コミックを眺めながら、何もかもが上手すぎるぞ、という違和感を多少とも覚えた。
 個人的な好みでしかないが、俺はごつごつと棘がある文章や下手なのか上手いのかわからない絵が好きで、例えば辺見庸のエッセイとか、先週読んだ藤沢周の小説とか、予期せぬ言葉遣いの宮沢賢治とか、独りよがりの文章を書く乙川優三郎とか、自分には持ち得ない気概のある作家がいい、最低限の整合性は求めるけれどカオスな世界に惹かれる。
 彼は常に今を生きている、私は社会から逃げて自分の殻に閉じこもりたい。
 水と油、というのとは違う。強いて言えばわずかな思考(志向)の違いから端を発した違いでしかなく、ソクラテスとプラトンの差異くらいでしかない。
 だから、とくとくとAIの面白さと可能性を語る彼を見ていて、羨ましくもあった。微笑ましくもあった。
 人生負けるが勝ち、というのが50歳を超えた頃からの信条になったが、こういうネガティブさがいよいよ自分の自然体になってしまった。
 
 
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