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2026年08月03日10:35

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7/31 版画家レンブラント 挑戦、継承、インパクト@国立西洋美術館

すでに夏バテ気味である。この日の最高気温35度。できるだけ駅から近い美術館美術展を選ぶ。

「えー、版画だけなの?つまらなくない?」と夫が言う。「いや、レンブランドだよ、見なくちゃ」と私。結果、魅了された。2時間半も集中して目を凝らすから疲労、この日は常設をあっさり諦めて切り上げる。西洋の版画史においてレンブラントの偉大さを知る充実の展覧会だった。

版画のヒエラルキーの頂点にあったエングレーヴィングからエッチングへの歴史転換にはレンブラントの果敢な「挑戦」=実験、実践があり、それが、より自由な表現をなしえた近代絵画に通じていったことがよくわかった。レンブラント没後の再燃期には、有名どころの近代画家に混じって、さまざまな展覧会を通して1、2点しか見たことがなかった画家の作品も見られて(その名を覚えていた自分にも感動しつつ)嬉しくなった。

レンブラント・ハウス美術館と国立西洋美術館の共同企画ということだが、西美にこれほどまでのコレクションがあったかと改めて知る。そうか、常設展内にある「版画素描展示室」では地味ながらもいつも充実の小企画展があるものね、副次的に見ることが多いのでつい流してしまうことも多いのだが、今後はもっと注意深く見ていきたい。

空いてはいないがストレスを感じない程度。版画だから作品は小さいので並ぶ形にはなるが。なんと全作品撮影可。とはいえ、ガラスが反射してうまく撮れないものも多い。
小さな作品が多いので、単眼鏡必携。
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https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2026rembrandt.html
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オランダ、アムステルダムの中心に位置するレンブラント・ハウス美術館は、レンブラントが1639年から1658年にかけて実際に暮らした家を利用した、世界で唯一のレンブラント専門の美術館です。レンブラントによるエッチング(腐蝕銅版画)の世界有数のコレクションを中心に、同じく素描作品、さらに彼と関連の深い、あるいは、その強い影響を受けた芸術家たちの作品を収蔵しています。一方、国立西洋美術館でも、レンブラントのエッチングを重点的な収集の対象としており、《病人たちを癒すキリスト》や《三本の木》など代表作を含む、20点余の作品を所蔵しています。
今回の展覧会は、この2つのコレクションを組み合わせ、国内の美術館、大学図書館および海外の個人コレクターから拝借した作品や書籍も加えて、レンブラントのエッチングと、それが同時代および続く時代に与えた影響を見ていく企画です。
展覧会の前半では、まずレンブラントのエッチングに焦点をあてます。彼は当時、先例より刺激を受けつつ、さまざまな実験的な試みを通してエッチング表現の可能性を追究し、その地平を拡げました。そうして生み出された諸作品は、数世紀にわたって芸術家たちに影響を与え続けます。とくに、19世紀には、エッチング技法そのものの再評価と結びつき、レンブラントのエッチングへの関心は熱狂的な高まりをみせました。展覧会の後半では、そうした事例を、版画のみならず文学や批評なども交えてご紹介します。


1レンブラント、版画の挑戦
レンブラントが制作を始めた1625年頃、エッチングは歴史的転換期を迎えていた。それまでエッチングはエングレーヴィングの代替技法として規則正しい線描が重視されていた。
が、17世紀初頭、オランダではその枠を超えた自由な表現が試みられるようになる。スケッチ風の自在な線、陰影のニュアンスに富んだ面的広がり、レンブラントはその可能性を大きく押し広げていく。

1−1 肖像と頭部習作

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン(以下、レンブラント)《自画像、口を開けた顔》
表情の習作として制作、いずれ物語場面の登場人物を描くのに生かすつもりだったんだろう、とのこと。
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レンブラント《柔らかい帽子をかぶり模様付き外套をまとう自画像》
やわらかい帽子の質感を細かい線で表現
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ヘンドリク・ホンディウス(父)、リュカス・ファン・ レイデンに基づく 《素晴らしき低地ゲルマニアの著名な画家たちの肖像画集》: リュカス・ファン・レイデンの肖像
エングレーヴィングの硬質な線描と比べるとその違いがよくわかる。
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1−2 社会的周縁者と庶民たち
レンブラントは社会的周縁者を好んで描いた。

ゼーバルト・ベーハム 《「寒い」と言う農夫 》《「たいしたことない」と答える農夫》
木版画
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レンブラントが翻案
レンブラント《「身を切る寒さだ」と叫ぶ農夫 》《「そんなことはない」と答える農夫》
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1−3 宗教主題
プロテスタント国家オランダでは、キリスト教図像の需要は低かったが、レンブラントは聖書の物語を人間ドラマとして描き、人々の心を揺さぶった。



ヤン・ファン・フリート、レンブラント・ハルメンス ゾーン・ファン・レインに基づく 《跪いて祈る聖ヒエロニムス》
レンブラントの油彩画に基づく
傍のライオンは足の棘を抜いてやって以来聖ヒエロニムスの忠実な友となった。タテガミがないけど…。
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レンブラント《アダムとエヴァ》
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前傾でアーチを作る知恵の木と巨大な爪とトカゲのような尾を持つ樹上の悪魔は、デューラーの作より着想したと考えられる。↓
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レンブラント《夜間エジプトへの逃避》
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↓のエングレーヴィングの闇の表現と比べるとよくわかる。
ヘンドリック・ハウト、アダム・エルスハイマーに基づく《トビアスと天使》
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エングレーヴィングは規則正しく明晰な線であるのに対し、エッチングの線は細く繊細で、不規則に重なり合い、複雑なニュアンスの闇を描いている。こうしたレンブラントの「黒い版画」は1ジャンルとして人気を博した。

線のネットワークは絵画的表現を生み出す。
最低限に近い線描によるペン素描風の作品や
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無数の線のネットワークで面を作り、陰影のグラデーションを繊細に表す絵画的作品も
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エッチングならでは、なのだろう。

また、レンブラントは印刷の紙にも拘った。ヴェラム(動物の皮をなめして作った紙)やカートリッジ紙(火薬と弾丸を包むための紙)なども使うが、東洋紙(和紙や中国紙)を好んだという。東洋紙はインクを吸収しづらく紙の表面に滲みを作り、豊かな陰影のグラデーションを作る。また明暗のコントラストを和らげるクリーム色の紙色も気に入った理由のようだ。まさか、レンブラントが和紙を好んでいたなんて、知らなかった!

レンブラント《イタリア風景の中で読書する聖ヒエロニムス》
エッチング、ドライポイント
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こちらが和紙
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レンブラント《百グルデン版画》
百グルデン版画というのは通称で、100グルデン(グルデンはオランダ通貨単位)の高値がついた作品という意味。内容でいえば《病人を癒すキリスト》で、西美所蔵のお宝だ。画面には新約聖書「マタイによる福音書」第19章に記された複数のエピソードが描かれている。いわゆる異時同図といえる作品だが、各エピソードの場面をコラージュのようにつなぎ合わせているわけではなく、主人公のキリスト像は一体で、その周りでさまざまなエピソードが混然一体となって展開している。構成が見事だ!
それをエッチングにドライポイント、エングレーヴィングを併用してドラマティックな光の効果、柔らかく深みのある絵画的な空間に仕立てている。細かい線のネットワークで闇、面のグラデーション、ペン画のような線描…あらゆる技巧が集結。用紙は、柔らかいクリーム色を帯びた和紙だ。ため息が出た。
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ドライポイントのみで製作した作品もある。

ドライポイントは、線を引いたときにめくれる金属のカス(まくれ・バー)にインクが絡むことで生まれる、独特のやわらかいにじみや温かみのある表現が特徴だが、摩滅するので部数は刷れない欠点があるので、ドライポイントのみでは製作しないのが通常だ。
レンブラント《民衆に晒されるキリスト(エッケ・ホモ)》
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1−4 銅板上のスケッチ

銅板をスケッチブックのように用いた習作風のエッチング
レンブラント《サスキアの頭部習作5点および年嵩の女性の頭部習作》
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その銅板も
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1−5 風景

レンブラント《田舎家と大きな樹のある風景》
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2 受け継がれる遺産ー17〜18世紀

レンブラントの版画技術が卓越しすぎて追随を許さなかったせいで、版画を継承する弟子は多くなかった。
フェルディナンド・ボル 《羽根飾りつきのベレー帽をかぶった若い男》
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ジョヴァンニ・ベネデット・カスティリオーネ、通 称イル・グレケット 《箱舟に入るノアと動物たち》
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左:レンブラント《 窓辺でエッチングを制作する自画像》
右:ゲオルク・フリードリヒ・シュミット 《窓の蜘蛛を伴う自画像 》
シュミットは18世紀ドイツにおけるレンブラントの信奉者。レンブラントの自画像を土台に自分の自画像を描く。
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ジョヴァンニ・アントニオ・カナル、通称カナレット《司教の墓のある都市の眺望》
ヴェネチアの風景画家カナレットもレンブラントに心酔。
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3 世紀を超えるインパクトー19〜20世紀


フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《〈闘牛技〉5:勇壮なモーロ人ガスールは、規則に従って牡牛を槍で突いた最初の男》
ゴヤは「自然とベラスケス、レンブラントのみが師であった」と語り、当時スペインで広まっていなかったレンブラント研究をした。
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ヨゼフ・イスラエルス《幼いヤン》
この人の名はポツポツ出てきていた。直近では2年前の「ウスター美術館展」の《砂丘にて》がよかった。オランダのハーグ派の画家らしい。
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19世紀イギリスやフランスでもエッチング・リバイバルの潮流があった。半ば下火になりかけていたエッチングが、画家の感性やオリジナリティを重視する近代にふさわしい表現として再評価されるようになったのだ。

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー《イタリアの想い出》
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エドゥアール・マネ《ジプシーたち》
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レンブラント《書斎の学者(ファウスト)》
1652年ごろ製作されたこの作品は、後世にさまざまな解釈を生んだ。ゲーテ「ファウスト」、ユゴー「ノートル=ダム・ド・パリ」のイメージと重なり、ポスターにも使用された。
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《「エッチングのパリ」誌のポスター》
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レンブラント《三本の木》
この作品も19世紀フランスで非常によく知られた作品で、パリの芸術家たちは自身の製作の着想源にした。
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シャルル=フランソワ・ドービニー 《にわか雨 》
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ジェイムズ・アボット・マクニール・ホイッスラー 《庭》
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猫発見
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アンデシュ・ソーン 《煙草を吸う女 I》
スウェーデンの画家で「ウスター美術館展」と今年都美「スウェーデン絵画」でみた作品しかないが、印象的ないい作品を描いていた。
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メアリー・カサット《ソファに座るレーヌとマーゴット(No. 2)》
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オディロン・ルドン《〈ヨハネ黙示録〉:その右の手に7つの星を持ち、その口より両 刃の利き剣いで 》
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アンリ・マティス 《版画を彫るアンリ・マティス》
ルドンがレンブラントに心酔したのは容易に想像つくが、マティスまでがこのようにエイスペクトした作品を作っていたとは知らなかった。
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レンブラントの変革と後世への影響力の偉大さがよくわかる展覧会でした。
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アルバムあります。
https://photo.mixi.jp/view_album.pl?album_id=500000121459621&owner_id=2083345

9月23日まで

ランチはトムヤムラーメン。酸っぱくて辛いのが夏向き。フォト
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