ほんとうはなかったのかもしれないね 光をなぞる指だけがある #短歌
代わりって便利な言葉だと思ってた でもきみだけが余ってしまう #短歌
選択の外にこぼれた影を踏み歩いたほうへ意味を与える #短歌
ころんって夜が転がるそのたびにおやつみたいに増える寂しさ #短歌
受け取ったかたちを崩す夜があり重さばかりを測り続ける #短歌
やわらかな青がまだ消えないまま すこし遅れて春に追いつく #短歌
その軽さ火よりも速く広がって桜は世界を外へひらいた #短歌
名づけないことで守れるものがありひらける空をそのままにする #短歌
言わないでとっておいたら夜になりちょっといいことみたいに光る #短歌
まぶた閉じ無色のままで抱きよせる泣かないための静かな重さ #短歌
選ぶたび燃えずに残るものがあり その灰だけが数を持ちだす #短歌
返事より先にほどけてしまう糸
触れないままでやさしくなれる #短歌
無賃乗車女 改札のない場所でだけわたしは正しく通過している #短歌
自由ってもっと軽いと思ってた こんなに息が苦しいなんて #短歌
きょうもまたのぼらなくてもいい日だね 空にさわらぬ梯子がひかる #短歌
拭き取れば消えるはずなのに指先がためらうほどのやさしい雨音 #短歌
ほどけては言えなかった名に似ていて結びなおせば消えてしまった #短歌
静けさが増えるほどに確かめる ここにいることだけがほんとう #短歌
追わないと決めた瞬間はなやかに風が正解みたいに吹いた #短歌
浮かんだまま戻れないもの抱えつつ駅のホームで靴先を見る #短歌
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