書き直さないで残した言葉から夜のやさしさすこしこぼれる #短歌
レシートのない時間だけ折りたたみ明日の隅へそっと差し入れる #短歌
窓越しにひかりを受ける布のよう触れないことで形を保つ #短歌
言葉より先に濡れてる影がいて ひらがなみたいに街へほどける #短歌
白さへと触れれば少し傷ついてそれでもひかりを受けとめている #短歌
靴という方向指示の器あり不在のために整えられる #短歌
三十分まだ誰のものでもなくて物語だけが先に座ってる #短歌
こぼれたぶんだけ静かになる水にわたしの影も少し混ぜとく #短歌
にぎる手の中にまだあるぬくもりを星にしないで夜を越えてく #短歌
お清めの塩を切らしているからかあなたの影が妙にやさしい #短歌
言わぬままゆれているのが似合う夜 水のかたちでいられるあいだ #短歌
消しゴムの匂いに似てるためらいを行間だけを残して閉じる #短歌
回収をされぬままでもかまわない伏線として置かれた今日だ #短歌
ハンガーの服にすこし触れてみる まだ人だった温度がある #短歌
こぼれないように笑ったそのあとで甘さばかりが口に残った #短歌
説明をやめた世界の端にいて靴底だけが信じる水面 #短歌
洗い終えた皿のやさしい冷たさに理由のかけらひとつ溶けゆく #短歌
まぶたほど軽いよろいをまといつつ風の手前で夢を見ている #短歌
こねられて少しずつあたたまってく 人のかたちはまだ途中なり #短歌
決められないことを選んでいるような時間ばかりが増えていく夜 #短歌
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