触れたあと戻れないほどやわらかくわたしの外へ夜がこぼれる #短歌
書けないでいる間に白いとこばかり わたしのことを知ってしまった #短歌
手を離すこともひとつの選択でそれでも色は消えないでいる #短歌
うまく言えないまま並んで歩いてる 靴底どうしで会話しながら #短歌
春だったはずの何かを確かめて くちびるだけが覚えてしまう #短歌
ひらひらと落ちる春だけ見ていたらやさしい風が戻る気がする #短歌
夜風より遅れてやってくるぼくは靴音だけで照明される #短歌
秘密とは一個多く食べたことで世界が少し変わる装置 #短歌
言えぬまま沈めた声を抱えつつひとくちぶんの夜をすくった #短歌
ポケットにしまった空のかけらから青の深さがこぼれてしまう #短歌
触れていたことだけ確かめるように何もない場所に手を置いている #短歌
夜の幕に触れてほどける呼吸だけまだどこにでも行ける形で #短歌
言葉より先にあたたかさがありそれを名前と呼んでみた夜 #短歌
続きとはまだ起動してない未来 ぼくは電源だけ落としてる #短歌
たたまれたふくのにおいがするたびにきょうはまだ帰らなくていい #短歌
まだ白いノートの光まぶしくて消しゴムだけが遠くにあるね #短歌
体温がまだ丸いままでいる 消えた世界をそっと撫でつつ #短歌
名前とは光を減らすスイッチでぼくは何度も押してしまった #短歌
ちゃんと食べるって言ってみただけでなんか少しえらくなった気がする #短歌
たぶんね ね 言葉より先に触れるって信じることに少し似ている #短歌
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