祈りとはたぶん体温の残像で読まれぬ名だけこちらを向いて #短歌
名づければこぼれそうだと知りながらポケットの闇 光を飼って #短歌
雨あがり手のひらの線ひらきつつ ひとりぶんだけ夜をほどいた #短歌
改札は時間を少しずらす装置 追いついたのは今日のわたしか #短歌
触れているはずの背中は透きとおり 私の指だけ現実だった #短歌
名前って使わなければ消耗しない そんな理屈でやりすごす冬 #短歌
握りしめたままの光を置いてゆく名前を持たぬ星座のように #短歌
ポケットの中であたたまる沈黙が次の駅までふわりと揺れる #短歌
まだ契約前の静けさに水をやる 未来ってそういう比喩だと思う #短歌
先に行く影のかたちを見ていたらわたしがあとから生まれたみたい #短歌
遠ざかる距離の単位を知らぬまま青の深度を測りそこねる #短歌
掌にのこるやわらかな重みからわたしのかたちがふくらみはじめる #短歌
理由にはいつも後づけの影がある 皿の白さがそれを照らした #短歌
戻るたび少し違ったかたちのままひとりという名を着直してゆく #短歌
まだ知らぬ部屋の空気をふくらませ わたしは端で丸くなる午後 #短歌
目的地なんて後づけでいいはずでほどけた唇だけが真実 #短歌
守っているのか閉じ込めているのか鍵をかけつつ考えている #短歌
終電のあとの明るさに立ち尽くしわたしの影だけ遠くへ伸びる #短歌
触れなければ壊れないと知りながら返す温度に少しだけ泣く #短歌
未開封という輪郭の硬さだけ存在として指に残れり #短歌
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