触れた指戻す理由を探しつつ知らないままの形を守る 短歌
拭き取れば消えてしまうと知りながら指を離せずしばらく置いた #短歌
シャッターを下ろす手首の細さごと残して部屋はひとりを選ぶ #短歌
変顔を安く差し出す夜の奥 本気の顔はまだ脱げなくて #短歌
やわらかな道のつづきを信じつつまだ渡さないひかりを持って #短歌
追いつけないまま残る背中を見ていたらわたしの中でだけ育ってた #短歌
白すぎて名前を呼ぶのやめてみる ここにいるのにまだ届かない #短歌
灯したのはやさしさだけでよかったと暗いところで知ってしまった #短歌
ひじかけのかたちに沿って手を置けばいなかった日の続きが光る #短歌
釣り銭の冷たさだけを握りしめ言えなかったこと入れるポケット 短歌
無音域抜けたところに立っていてわたしが夜を見つけてしまう 短歌
箱になるその日のために残されて触れられた跡だけを持ってる #短歌
成果とは呼べないものを持ったまま丸まる夜と帰ってきたよ #短歌
指先の火の記憶だけ連れてきてひとりの部屋にほどけだす朝 短歌
飛ばなくていいと言われてうなずいた 胸の模様がまだ消えなくて #短歌
境界を濡らしたままで戻れずに水の色ひかりを胸にしまった #短歌
書き終えて折ったところで気づいたのほんとは誰に届けたいのか #短歌
帰るたび同じところに足を置く 其れだけのこと守られている #短歌
夕あかり輪から外れて歩きだす まださよならに追いつかないね #短歌
終わっても拍手をせずにいたのはね 消えてしまうと思ったからで #短歌
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