その名だけ借りて夜更けを歩いてく地図にないまま距離が縮まる #短歌
ため息を畳んでしまう引き出しに今日の汚れがやさしく眠る #短歌
半分の信じる癖が抜けなくて世界の端を今日も踏み外す #短歌
どんぶらこ云うためだけに丸くなり桃は途中で春を覚える #短歌
ホースだけやけに緑で世界とはこんなふうにも残るんだろうね #短歌
信じないふりが上手になった朝 指はまだ少し未来を探す #短歌
ためらいを越える速さで息をして後悔だけが少し遅れる #短歌
電柱にほどけるように寄りかかり一輪車の影があくびを #短歌
駐車場エンジン切ってもあたたかい人生みたいな余熱のシート #短歌
泡ひとつ消えるたび少し軽くなる 帰らない理由を椅子に預けて #短歌
夜の底名前を持たぬ合図だけ聞こえたことを明かりにしない #短歌
声になる手前のとこで立ち止まり消えかけの色に名前をあげる #短歌
半袖で世界をすこしはみ出して蛇行するたび風が話すよ #短歌
消えかけの色にまぶたを近づけて話す代わりにうなずいてみる #短歌
重さって置いてわかったものばかり昨日の服がまだ息をする #短歌
自然光越しに流れるワイドショー誰の声でもない午後がある #短歌
包帯の白が話すよ長い昼 助かったってまだ言えてない #短歌
よく乾く洗濯物に夢はなく羽をほどいた昼だけがある #短歌
急かされて街は先へと行くけれどこおろぎだけがまだここにいる #短歌
名を問わず木の冷たさを膝に置き夜更けの宿で息をそろえる #短歌
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