約束は目覚ましみたい鳴る前に夢のかたちで胸をあたため #短歌
声のない映画のつづき 歩道橋 白線だけが台詞を覚え #短歌
午後の陽が祈るかたちの手をほどきリラの沈默へ静かに触れる #短歌
拍手待つ床の真ん中立ち尽くし言わないという選択が鳴る #短歌
次の駅まだ名前のない沈黙が胸ポケットで発車待ってる #短歌
窓際でノートの端に影が寝る 三分の午後をだれも起こさず #短歌
唱えても世界は少しも折れなくてランプの影だけうなずいている #短歌
選ぶって生きる側へと戻ること 皺のある服が先に呼んでる #短歌
聞こえないふりを続けて街になる 傘の内側 声だけ増える #短歌
通話後の沈黙を抱き歩き出す 街灯の影が声の形する #短歌
まぶた越しひかりがそっと触れるからほんとのことは静かに起きる #短歌
振り向けばもうそこにない背中にも守った跡だけ風が触れてる #短歌
飲み込めば音だけ消えて意味はまだ口のなかにも立ち尽くしてる #短歌
夜更けには声より先に肩が鳴る 言葉を脱いだ体が返事 #短歌
近づけば壊れてしまう白さだね 揺れない裾に冬が反射す #短歌
終点はないって知ってて安心しまるいまま行く今日のつづきへ #短歌
火のそばで水の話をしてみよう 湯気がことばをやさしくほどく #短歌
壁際の椅子に置かれた鞄からまだ使われぬ朝がこぼれる #短歌
起きたって言った口だけ先に起き まぶたの裏でほどける時計 #短歌
負けの絵に色を足すなら息ひとつ たたんだ傘がまだ濡れている #短歌
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