名もなくてそれでもここに在るみたい 雪の呼吸が家を起こさず #短歌
声にせず気配を数えている時間 彼岸の椅子は少し足りない #短歌
白すぎて名前失う布の朝 ぼくの鈴だけまだ鳴らさない #短歌
牡丹雪 肩に積もって消えるまで選ばぬ時間が人を人にする #短歌
目が覚めて水の所在を確かめる 声にならない声を聞くまで #短歌
拾うたびちがう重さで黙る石 叶う前から指が覚える #短歌
冷えきった窓に手をあて言いかける七草粥の湯気を信じて #短歌
冷えきった膝に世界をのせたまま雨音だけが名残を刻む #短歌
ゆっくりと生まれ直せばいい道でライトの先がまだあたたかい #短歌
潜る背に残る輪紋を数えつつ拍手は水へ翻訳される #短歌
閉めたあとドアはしばらく考える 出ていく言葉の足音のこと #短歌
手をひらくそのたび形は変わるけどバトンはいつも空に近づく #短歌
ほどけない熱を知ってる土だから蕾はちゃんと待つことをする #短歌
その息は書かれずにいて白いままノートの外であたたかかった #短歌
暗闇にバースデーソングしみわたりだれのためでもいいから歌う #短歌
引き寄せた椅子のきしみが合図となり人間のまま座り直す夜 #短歌
黙り込みかかとで測る今日の距離 言葉は少しあとから来るね #短歌
電気消しまだ起きている影たちが明日の形をひそひそ選ぶ #短歌
電話口のことばが先に汗をかく 季語が迷子に天気予報だ #短歌
交差点 雨粒の数 数えれば同じ調べに足並みそろう #短歌
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