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2025年11月28日20:09

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暗愚ふたりで「安吾展 in 横浜」

 11月28日金曜日、快晴。
 本日の予定は午後1時、みなとみらい線中華街駅改札口でひとり出版社の代表と待ち合わせ。ふたりで神奈川県立文学館の坂口安吾展に行く。
 高校時代、安吾の『堕落論』を読んで、世間の常識とあまりに違う安吾の人生観に惹かれた。こんなことを言っちゃっていいの?
 生き抜くためには堕落せよ、と安吾は言う。戦時下の日本人は我慢強くて美しかった。その美しさは真の美しさでないことは言うまでもない、と国家総動員制の社会と醜い戦争を冷笑し、規範を守ってちんまりと生きる愚を徹頭徹尾批判する。自身の信条を形成する時期に強烈なアジテーションを受けると、それは毒にも薬にもなる。
 以来、この歳になるまで思い出したように安吾のエッセイや小説をときどき読んでいる。山中湖のマンションの一室には文庫判日本文学全集「安吾」編を置いていて、心が弱ってきたら手に取っているし、安吾の作品はいくつかラジオドラマになっているので、耳で安吾を聞くこともある。
 神奈川県立文学館の展覧会は大がかりで展示内容がとても充実しているのだが、今回の安吾展はそのなかでも秀逸だと思った。学芸員とは別にどうやら荻野アンナが監修しているらしく、随所に彼女の「絵解き」文が掲げられていた。
 安吾の書斎を模した空間があって自由に立ち入ることができるものだから、スニーカーを脱いで文机の前の座布団に座ってみた。出版社のシャチョーが笑いながら「撮っておくよ、あとで送って上げる」とデジカメを取り出し、2枚ばかりポーズをとったりしたほど私は気分よかった。こんなに嬉しかったのは花巻の「宮沢賢治記念館」以来かも。
 ぼくらが展示物をちょうど見終わった時分に館内放送が流れ、これから職員によるスライドトークがあります、というので、聞きに行くことにした。
 スライドで画像を見せながら展示物の説明をする、というイベントだったが、復習になった。その間、ずっと思っていたのだが、安吾全集が安価で手に入るなら買って読み尽くしたい、と。
 午後2時45分あたりで館内を出て、貧乏なシャチョーに「中華街より安い寿町のドヤ街へ行って、あなたは飮む、私はメシを食う」としますか。と訊ねたら、乗ってきた。で、石川町を目指して歩いたら、道を一本間違えてしまい、山手駅近くに進んでしまった。
 しかし運がいいのか、ちょっと怪しい古本屋さんがあって、シャチョーは大喜び。
『古書自然林』http://www.pat.hi-ho.ne.jp/sizen/
 私もめちゃ楽しい。
 一冊の画集に惹かれた。2011年横須賀美術館開催「島田章三展」の図録で、200ページ近い立派な美術書だった。初めて名を知り、ゆえに初めて見る絵。
 もし山中湖の一室に絵を一枚飾りたいとしたら、この画家さんの絵がいいかも、などと不埒な考えが頭をよぎる。
 その図録を私は買い、シャチョーは4冊古本を買って、JR山手駅まで行った。
 帰り道ゆえ、桜木町駅で降り、横浜のクズたちが昼間から飮んでいるような飲食街、ぴおシティ地下へと案内し、私は焼き鳥とおにぎりと水、彼はビールとビールと鶏のチューリップ揚げやお刺身盛り合わせとビールとビールを頼んだ。会計時、彼は無理して「奢るぞ」などと先輩ヅラをしたが、千円札一枚を手に握らせたら嬉しそうだった(笑)。
 少々歩き疲れたが、嬉しいことがいっぱいの上出来の一日となった。 

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