祖母の手にしがみつく雪飛びかけて空を撫でたる小さなまるみ #短歌
白い息ほどけて冬の道すがら通学路さえやわらかにある #短歌
帰省して風のかたちで知る町の角ごとにある過去の重力 #短歌
責任の所在あいまいな夜風にゆられてひかる自販機の窓 #短歌
ふたりして笑い合うから湯呑みには湯気より深い老いがのぼって #短歌
楽しみのために苦労をかみ砕く飴のなかにも傷があること #短歌
崩れては積むジェンガにも秩序あり院進の話聞き流しつつ #短歌
犬にはねって弱いんだってさふとした話のやさしさに似て #短歌
みんなもう次の光に慣れているセロハンテープの端を見つめて #短歌
サポートの言葉ひかえて歩きだす風が誰にも名を呼ばせない #短歌
からんころん過去の私を揺らす音 見てはいけない空が光るよ #短歌
二度目などないと思えばすこしだけ世界が静かに遠のいていく #短歌
伝えきれぬことばの余白つめながら書き出しのよい午後をたたむ鞄 #短歌
真顔だと何でも冗談みたいだね 冬の通話の間のひかりは #短歌
「帰省日」と書かれた文字のまるみから父のひとりの声が聞こえる #短歌
全然家だけでじゅうぶん 湯気のたつ鍋のむこうに知らぬ幸福 #短歌
リプレイのない毎日に馴れながら鏡の男も息をしている #短歌
昼寝前のラーメンすする塩の湯にうすれていける午後のしずけさ #短歌
起き抜けの息のぬくもり置き去りに喪服の袖のひかりを整う #短歌
ひらがなの名を見て笑う かつていた子のまま残る部屋のぬくもり #短歌
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