真珠とはまぶたの裏の白き渦 ねむりの底で私をつつむ #短歌
風のなか名のない花が呼びかける幼児用墓地 声のかたちで #短歌
チェロの背に耳をつければ静かな塩 野原の粒が鳴っている午後 #短歌
鳴らす子の指に世界がひらかれてブザーの音は祈りのかたち #短歌
冴えながら浴槽の空に耳を澄む 視力は藤のつらなりとして #短歌
罰金を払うくらいの呼吸してきみの笑いに火を置いている #短歌
かぼちゃには死者の息する穴があり飴を分け合う舌のぬくもり #短歌
めんつゆを薄めすぎたら暮れていく味の深さに似たさびしさよ #短歌
ゆびの紅 天を吊るまで遠くなる眠気の花を見てるようだね #短歌
また明日捜そうよって言うときの光のかけら掌にまだ #短歌
音のない雪に針落つときだけが角砂糖舐め言葉を溶かす #短歌
夢もなく眠るというはひとすじの涙を置いて呼吸をほどく #短歌
奪ってもなお残るものやわらかく記憶の底で桜が垂れる #短歌
捨てないでくださいの声をひび割れて光る看板 雨をのませる #短歌
食パンが卵液すする音として人類史とはやわらかな罪 #短歌
尽きたとは思わず言えぬ匙の先 まだぬるぬると理由を探す #短歌
蝋梅をくぐる吐息のしずくからわたしの駅は一度きり咲く #短歌
めんつゆの底に沈んでゆく影をひとりぶんだけ信じてしまう #短歌
夜空より深くまぶしい声を出すオーロラだけが降る場所にいて #短歌
札幌の最高気温を見つめてはまだやれる気が少しだけする #短歌
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