落ちているレシートひとつ知らぬ名の誰かと私 ならぶ買い物 #短歌
植えられて色をそろえた菫より脇にしずかにひとつの影は #短歌
布ひとつ吊るせば風も生まれるにないまま光ただ刺してくる #短歌
消音のボタンを押した部屋のなか包まれながら息もとどめる #短歌
通過する機の音ひびく闇のなか わたしの天井おしあげながら #短歌
遊び声重ねて落ちる新聞に世界の痛み埋もれてしまう #短歌
帰りゆく背中見送るそののちにひとりの音が部屋に満ちてく #短歌
埋めたのはプラモデルさえ化石へと変わるひかりを待つためだった #短歌
新しき紙のすきまにただひとつ 油の匂いわたしを包む #短歌
歌うたび若さの影に追われ筒務めの数字 借金の文字 #短歌
濡れた足 砂のぬくもり忘れかけ夕立だけが夏の記憶に #短歌
湯気のなか折れまがりゆくその指をだれも見ずして列だけ続く #短歌
戻れない匂いをただよわす風のなか ふりむく場所はどこにもなくて #短歌
知らなかった癖をひとつの所作にて十二年目の夜に触れたり #短歌
白目だけ贈りものめく仕草には愛とも嘲り区別つかない #短歌
たとえばの宇宙人とも会えぬまま記念写真は空席ばかり #短歌
空振ってしかたなくまだ差し込めばコートの中の沈黙ひびく #短歌
それぞれの光の下で揺れているちいさな炎 言い訳みたい #短歌
頁なく声だけひとりひびかせて詩のふりをして今日をすごして #短歌
約束は「また合いましょう」それだけで不安も安堵もくるくるまわる #短歌
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