正しいと何度も言って歩いてるそれでも風は背中を押さない #短歌
ごめんねと繰り返すたび夜が来て赦されたことが少し痛くなる #短歌
映り込む自分の影を見つめつつ知らない誰かが読む本のように #短歌
泥酔の深い闇から起き上がりくちびるだけに残る沈黙 #短歌
焼き魚に洗濯の波が押し寄せる化粧しながら詩を紡ぐ日 #短歌
水鳥の肺呼吸だけ浮かび出てひと粒の泡が揺らした水面 #短歌
剥きつづけたただ涙だけ流れ出てそれでも君にまだ遇えないまま #短歌
曇りとる布をくりかえしあてながらどこかで心も拭きそこねてる #短歌
足音がかさなる廊下ひびきつつ誰もが黙って蛇口をめざす #短歌
安すぎて少し黙って立ち止まり大丈夫だと何度もつぶやく #短歌
咲き終えてそよぎのあとに立ち止まる工場の庭をひとつ染めたまま #短歌
歩き出す影と影との重なりがほんの一瞬映画みたいだった #短歌
「1枚だけ」人生だった 封の音がまだ耳の奥で繰り返す夜 #短歌
飲みかけの紙コップ越しに見る景色 坂の勾配が胸にひろがる #短歌
鍵ひとつ手のひらの奥温くなって冷めかけた夢に再びおぼれるら#短歌
小銭ひとつ落とせば衣は舞い上がりやがては静か 夜の水音 #短歌
きみの影 夢にあらわれ壊すたびわたしは霧の奥に沈めり #短歌
追い越してなお振り返る足音にわたしを包む水の静けさ #短歌
壊れたらただ壊れたと思うだけ呼びかけても返らぬ声よ #短歌
南武線車内にひびく名字だけ たしかにわたし きみであること #短歌
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